ブライニングは有効か?比較実験 サーモン編

BONIQマニアにおくる、低温料理の疑問あれこれの検証。

日々低温調理の研究をしていると、従来の調理法とは違う、こんなことがこんなに簡単に出来るのか!という感動がある一方、本当にこれで良いのか?他にベストな方法があるのではないか?という疑問も同時にわいてくる。
最近では低温調理のメソッドに関する情報が増えつつあるが、それが本当に正しいのか?
自分で実際調理をする中で出てきた疑問を検証してみる。

最近取り上げられることが多くなった“ブライニング”という調理技術があるが、調理前の肉や魚を塩水に浸けておくことで身に塩味と水分を含ませ、調理後の身質を柔らかくジューシーにするという方法である。
ブライニングの専門家、ジョージア大学のエステス・レイノルズ博士によると「通常は肉を調理すると30%の水分を損失するが、ブライニングしてから調理すると15%の水分損失で済む」ということである。

しかし和食では、調理前に魚の身に塩を振ることで余分な水分と共に臭みを抜き、旨みを凝縮させる“振り塩”という技法がある。つまりブライニングの“身に水分を含ませる”と逆のことをやるわけである。

ブライニングの技法には賛否両論あり、「ジューシーな仕上がりになった」という意見がある一方、「身に余計な水分が増えた」という意見もある。
ブライニングは本当に有効なのか?

そこで今回はサーモンを使い、
①ブライニング(塩水浸け)後、BONIQ
②振り塩後、BONIQ
③BONIQ後、フリーザーバッグに塩を入れて含ませる

を比較実験する。

③の方法は「鶏むね肉の低温調理 塩のタイミング比較実験」や「ローストビーフの低温調理 塩のタイミング比較」の実験で、鶏むねや牛ももの場合、低温調理後にフリーザーバッグに塩を投入して肉に味を含ませた方が、よりジューシーで柔らかい身質になるという、あまり他では例を見ない驚きの結果が出た。

サーモンでも通用するのか、①ブライニングと②振り塩に比べてどうなるのか?

BONIQ設定

・50℃
・30min

材料


・サーモン(生食用、アトランティックサーモン)  1枚につき約130g
・塩  1.2g(サーモンの重量の0.9%)

<ブライン液>
・冷水  180ml  
・塩  18g(水の10%)
・砂糖  9g(水の5%)

《手順》

① ブライニング(塩水浸け)後、BONIQ

サーモンをブライン液に浸し、45分冷蔵庫で置いておく。
※雑菌の繁殖を防ぐため、水は冷水を使用。5℃以下を保つよう冷蔵庫に入れる。
サーモンを引きあげたらペーパーで水気を拭き、フリーザーバッグに入れてBONIQ(50℃ 30分)で低温調理する。

② サーモンに振り塩後、BONIQ

サーモンに塩を振って10分置く。
出てきた水分をペーパーで拭き、フリーザーバッグに入れてBONIQ(50℃ 30分)で低温調理する。

③ BONIQ後、フリーザーバッグに塩を入れて含ませる

サーモンのみをフリーザーバッグに入れてBONIQ(50℃ 30分)で低温調理する。
設定時間終了タイマーが鳴ったらフリーザーバッグを取り出して塩を入れ、30分置いて味を含ませる。

《まとめ》
ドリップの量を比較してみると・・・

「① ブライニング」のものは、フリーザーバッグから取り出す時点で崩れそうになった。包丁を滑らせながら慎重にカットしようとしたが、ところどころ崩れてしまった。
ドリップが多かったが、ブライニングで身に水を吸わせている分、身にも多くの水分が残っている。
他と比べ、一番身が柔らかくプルプルである。しかし・・・魚臭さを感じる。

「② 振り塩」のものは、かなり身が柔らかいが崩れるほどではなく、ふっくらしている。ドリップが少なく水分が失われていない。
噛むとじわっと旨みがしっかり感じられて、かなり美味しい。魚臭さは全くない。

「③ BONIQ後、塩」はドリップは多く出ているが、従来の調理法に比べ充分柔らかい。①②よりは身が引き締まっていてる。魚臭さは少ない。ドリップと共に臭みも流出したか。

そして、サーモンの結果は・・・

① ブライニング(塩水浸け)後、BONIQ


身が崩れるくらい柔らかい。やや水ぶくれ。
魚臭さを感じる。

② サーモンに振り塩後、BONIQ


ふっくら柔らかい。旨みしっかりでかなり美味しい。
魚臭さ全くなし。

③ BONIQ後、フリーザーバッグに塩を入れて含ませる


充分柔らかい。魚臭さ少ない。

ということで、

柔らかさ ①>②>③
旨み ②>③>①
臭みがない ②>③>①

「②振り塩」のものが圧倒的に美味しい。
見事にサーモンの旨みを充分に引き出し、ジューシーさを保ちながら、臭みがほとんどない。最高の仕上がり。

「①ブライニング」したものは柔らかいには柔らかいが、旨みの量が変わらず水分量が増えたからなのか、“水ぶくれ感”が否めない。
それでは焼いてみたらちょうど良い水分量になるのでは?と考え、魚焼きグリルで焼いてみたところ、表面はカリッと中はふわふわになった。味を期待したが、魚臭さは無くならなかった。
またブライニングはサーモンを加熱した時に表面に出てくる白い塊(アルブミン)が出なくなる効果があるというが、今回の低温調理の温度は50℃であるのでアルブミン(凝固温度は65度)がさほど出ず、ここでもブライニングの効果は必要なかった。
また、このサーモン1切れで18gという結構な量の塩を使うのに、メリットが少ないように思う。

「③のBONIQ後、塩」は牛ももや鶏むね肉で実験した際はかなりジューシーに仕上がり旨みもたっぷりであったが、サーモンの場合はそのひと手間と時間の対効果は少なかった。

人間の味覚が美味しいと感じるのは、“ジューシー(=水分含有量が多い)で柔らかい”だけではダメで、“旨み・適度な歯ごたえ・臭みがない”というのも非常に重要な要素である。

つまり、50℃でサーモンの低温調理を行う際は、“ブライニング”ではなく“振り塩”が圧倒的に美味しい仕上がりになるということが分かった。

※和食にも一夜干しを作る時など“立て塩”というブライニングと同じように塩水に魚を浸ける技法があり、“ブライニングが全てダメ”ということではない。
※50℃での低温調理には、生食用のサーモンが必要。通常の加熱用はアニサキスの危険があるので充分な加熱を。

《作った感想》
以前より、“ブライニング”と和食の“振り塩”の技法が全く反対のことを行っていることに疑問を持っていました。
今回はサーモン50℃で実験を行い、“振り塩”に軍配が上がりましたが、他の食材、別の温度の場合ならどうなるのかも比較実験したいと考えています。
塩は入れ方やタイミングで料理の出来栄えを左右するとても奥深いもの。
それが低温調理の際にはどう働くのか?
もっと美味しくするにはどうすれば良いのか?
頭を抱えつつ、ワクワクしながら研究に取り組んでいます。

質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^


【注意】食中毒に関しては、下記のサイトをご一読下さい。

特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75度1分以上】の加熱をしてください。

→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防

 

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KEIKO

KEIKO

大学卒業後にフレンチを学びにル・コルドン・ブルー・ロンドンへ留学。 その後、La Maison Courtineパリにて料理人をした後、フレンチの鉄人坂井がオーナーを務める大阪の名門フレンチ ラ・ロシェルにて従事。日本ソムリエ協会公認ソムリエ。お酒にマッチするBONIQレシピを提案させて頂きます。

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