・BONIQ設定
・材料
・比較実験
・比較実験結果
・作った感想
※本レシピはアルコールです。お酒は20歳になってから。未成年の飲酒は法律で禁止されています。法律と適量を守って、お楽しみください。
BONIQマニアにおくる、低温調理の疑問あれこれの検証。
「寒い時期は熱燗(あつかん)が飲みたくなる。」どこかで聞きそうな言葉であるが、実はこの「熱燗」という言葉、「温めた日本酒」を意味するのではない。理屈っぽくなるが、温めた日本酒の総称は「燗酒(かんざけ)」と言い、「熱燗」とは正確には「50℃に温めた酒(※結構熱い)」のことを指す。
そんな細かいこと言ってないよ、と突っ込まれそうなところであるが、日本酒というのは面白いことに、同じお酒でも温度によって香りの立ち方や表情が変わり、その変化を楽しむことができる。特に、燗酒は温めることで酒の甘みや米の旨み、味の幅が引き出される。心も身体も温める燗酒は日本酒の醍醐味であって、ワインではそういうわけにいかない。スパークリングワインや白ワイン、赤ワインなど種類によって飲むおすすめ温度は多少異なるが、一番高くても18℃前後であり、これ以上になると酸味や味わいがぼやけてしまい、本来のワインの味わいでなくなる。(スパイスや甘みを入れるホットワインは除く。)「赤ワインは常温が良い」という説を聞いたことがあると思うが、これは夏でも涼しかった以前のヨーロッパの話。日本の夏はとんでもなく暑すぎる。(現在のヨーロッパも同じく。)ワインとは違い、日本酒は幅広い温度帯で楽しめるのである。もちろん種類によって、冷酒(冷やしたもの)向きのものや、燗にするのが良い、などおすすめの飲み方はあるが、基本的には好みの温度で飲んでも良い。ちなみに「冷や(ひや)」というのは冷やした冷酒とは違い、20℃くらいの常温のことを言う。
さて、家庭で日本酒を燗するには、簡単に済ませるなら電子レンジにかけるか、丁寧にやるなら湯せんにつける方法がある。
電子レンジは短時間で温めることができるが、急に温度が上がってしまったり、内部で温度差ができるため、途中でかき混ぜて加減をみたりする手間がある。また、マイクロ波の振動により風味が飛ぶと言われている。熱い湯せんに浸けると、タイミングを逃せばあっという間に熱くなってしまうので、こまめに温度チェックする必要がある。BONIQなら完璧な温度コントロールができる。お気に入りの日本酒は、最高の状態で味わいたい。
それでは、BONIQの湯せんに浸けて「45℃の上燗(じょうかん;熱燗よりも5℃低く、香りがより感じられるとされる)」にする場合、BONIQ設定46℃で何分で中心まで均一な温度になるのか?
※BONIQ設定が「45℃」ではなく「46℃」なのは、BONIQ機器と芯温計の測定誤差により、芯温計の表示が永久に45℃に達しない事態を避けるため。形状や材質の違う以下の3種類をモニタリングする。
実験1. カップ日本酒(ガラス製)
実験2. 陶器のとっくり
実験3. 銅(銀メッキ加工)のとっくり
※通常、銅は赤っぽい「銅色」であるが、実験3のとっくりは銀メッキ加工をしているため、「銀色」をしている。「実験3. 銅のとっくり」の熱伝導率はガラスや陶器より良いので、実験3が一番速く45℃に到達すると予想されるが、どれほど違うのか?ガラスのカップ日本酒と陶器では差が出るのか?
BONIQ設定
46℃
材料
<実験1>
・カップ日本酒(ガラス製) 1合<実験2>
・陶器のとっくり + 日本酒 1合<実験3>
・銅(銀メッキ加工)のとっくり + 日本酒 1合※日本酒は全て同じ銘柄、冷蔵庫で冷やした状態のものを使用する。
《手順》
比較実験
実験1. カップ日本酒の金属の内フタを少し開ける(芯温計を入れるため)
実験2. 陶器のとっくりに日本酒1合を注ぐ
実験3. 銅のとっくりに日本酒1合を注ぐ
※日本酒は全て同じ銘柄、冷蔵庫で冷やした状態のものを使用する。
BONIQをセットし、湯せんが水の状態からそれぞれを入れて芯温計を刺し、日本酒が45℃になるまでの温度上昇モニタリングを行う。
※湯せんが水の状態から行うのは、実験1のカップ日本酒は耐熱瓶ではないため、熱い湯せんにいきなり浸けると瓶が割れる可能性があるため。実験2と3も同じ条件に従った。
<BONIQセット時>
※肉、魚(生食用を除く)は種類と厚みに応じて加熱設定を変更する。参照:「低温調理 加熱時間基準表」
※食材全体がきちんと湯せんに浸かるよう、十分な水量を用意する。
※容器の首まで浸かるようにする。下限水位に足りない場合は底上げをする。
・BONIQ 低温調理コンテナ:コンテナラック、トレーを使用する。
・鍋:耐熱性のココットなどを逆さに置く。
<BONIQ投入時>
※容器の首まで湯せんに浸かるようにする。
※高温・長時間調理時は、湯せんにカバーをして水位減少を防ぐ。
・BONIQ 低温調理コンテナ:コンテナルーフを使用する。
・鍋:ラップを使用する。
・BONIQ 低温調理コンテナ&コンテナアクセサリー(ラック、トレー、フタ、ジャケット)はこちら
・BONIQ 深型ホーロー鍋はこちら
比較実験結果
結果は・・・
日本酒が上燗(じょうかん)の温度「45℃」に達したのは
実験1. カップ日本酒 29分
実験2. 陶器のとっくり 36分
実験3. 銅(銀メッキ加工)のとっくり 14分
※ちなみにこれらの温度到達時間(分)は、BONIQをセットしてすぐにそれぞれを湯せん(水の状態)に浸け始めた時間であり、BONIQ設定時間ではない。
「実験3. 銅のとっくり」は熱伝導が良いので一番速いと予想していたが、それにしても実験1、2の倍以上も速く45℃に達した。次いで「実験1. カップ日本酒」。カップ日本酒とさほど差がないものの、「実験2. 陶器のとっくり」が一番時間がかかった。
早さ:実験3. 銅のとっくり > 実験1. カップ日本酒 > 実験2. 陶器のとっくり
本実験では芯温計で計測するために「実験1. カップ日本酒」の金属の内フタを少し開けたが、ただ燗をするだけなら内フタは開ける必要がない(プラスチックの外フタは取る。ただし湯せんが60℃以上の場合は膨張する恐れがあるので必ず内フタも開ける)。なので、BONIQ バルクアップコンテナ フルセットのコンテナラックやメッシュトレー(※湯せんの高さを調節したりできるBONIQ専用器具)をセットしたり、湯せんの湯量を調節したりする必要がない。BONIQをセットしたら水からカップ日本酒を放り込んでおけば良いので、一番簡単である。誤って湯が入ってしまったりする心配が全くない。
「実験2. 陶器のとっくり」は時間がかかるからといって、ダメなのではない。温度上昇に時間がかかるということは、むしろ冷めにくい。食事を楽しみながらゆっくり日本酒を楽しむのには、一番向いているのである。お気に入りのとっくりに入れるといっそう情緒があり、美味しさも格上げされる。注意すべき点は、とっくりが比較的軽いので、湯せんに入れると転倒するおそれがあり、慎重に取り扱うことが必要である。
「実験3. 銅のとっくり」は何と言っても熱伝導率が良く、狙った温度に達するのが速い。45℃に14分で到達するが、44℃には10分で達するので、湯せんに入れて10分でほぼ上燗になる。もちろん電子レンジや、熱湯の湯せんで燗するのが一番早い。しかし電子レンジでは本来の酒の香りや風味が飛びやすく、混ぜて温度をチェックする必要がある。熱湯の湯せんでは、タイミングを逃せば熱くなり過ぎる。その点、BONIQの湯せんに銅のとっくりを浸けておけば、それほど時間がかからず放ったらかしで狙った温度になる。他にもステンレスやすずなど、銅ほどは熱伝導率が高くないにしても、ガラスや陶器よりは圧倒的に早く狙った温度になるだろう。
BONIQで燗をすれば、ある程度の時間がかかるとは言え、時々温度チェックをする手間もない。飲む出番が来るまでしばらく浸けておいても、ずっと理想の温度を保っていられる。食事をしながら次の日本酒を湯せんに入れておいたり、好きなタイミングで飲むことができる。
カップ日本酒、陶器のとっくり、銅のとっくり、それぞれ利便性や良さがあり、シチュエーションによって使い分けると、よりいっそう日本酒が楽しくなるだろう。
※本レシピはアルコールです。お酒は20歳になってから。未成年の飲酒は法律で禁止されています。法律と適量を守って、お楽しみください。
参考文献
・山同敦子、めざせ!日本酒の達人 -新時代の味と出会う、ちくま新書、2014、p.122
・君島哲至(監修)、日本酒完全ガイド、池田書店、2011、p.102
・大関株式会社、日本酒講座:日本酒の容器について、大関公式サイト、2024/3/1参照
https://www.ozeki.co.jp/contact/qa_seishu.html
《作った感想》
今まで日本酒を飲むとしたら、家でもお店でもだいたい冷酒(冷やしたもの)でした。今回、日本酒の温度上昇モニタリングを行い、ぴったり45℃になったものをテイスティングしたところ、ふわっとした香りの立ち方と旨味の広がり方に驚きました。身体にじんわり染み込んでいくようです。
「ああ、きちんと温度管理したものはこんなに美味しい・・・」
ちなみに今回の実験で使用したのは山口県にある永山本家酒造場の「貴 特別純米」です。
以前はカップ酒と言えば「大衆の酒」のイメージでしたが、こんなハイクオリティのものがカップ酒で楽しめるのにも驚きました。
日本酒の温度についてもっといろいろ研究してみたい、と感じた瞬間でした。
ハマりそうな予感です。
質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^
【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。
また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防
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- 低温調理のルール 〜6つのポイント〜 - 2020年6月3日
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