比較実験

41℃〜 日本酒 香り&味わいの変化 温度比較実験:低温調理日本酒

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BONIQ設定
材料
比較実験
比較実験結果
作った感想

※本レシピはアルコールです。お酒は20歳になってから。未成年の飲酒は法律で禁止されています。法律と適量を守って、お楽しみください。

日本酒は幅広い温度帯で楽しめる。同じお酒でも温度によって香りの立ち方や表情が変わり、その変化を楽しむことができるとされる。「冷酒(れいしゅ)=冷やした酒」もあり、「燗酒(かんざけ)=温めた酒」もある。

ワインではそういうわけにいかない。スパークリングワインや白ワイン、赤ワインなど種類によって飲むおすすめ温度は多少異なるが、一番高くても18℃前後であり、これ以上になると酸味や味わいがぼやけてしまい、本来のワインの味わいでなくなる。(スパイスや甘みを入れるホットワインは別。)

もちろん日本酒の種類によって、冷酒向きのものや、燗にするのが良い、など“おすすめ”の飲み方はあるが絶対ではなく、基本的には好みの温度で飲んでも良いとされる。ちなみに混乱しがちなのが「冷や(ひや)」。「冷酒(冷やした酒)」とは違い、「(20℃くらいの)常温」のことを言う。
温めても冷やしても楽しめるのは日本酒ならでは。温度によって呼び方もある。

燗酒の温度と名称
《燗酒(かんざけ)》
・55℃前後:飛びきり燗
・50℃前後:熱燗
・45℃前後:上燗(じょうかん)
・40℃前後:ぬる燗
・35℃前後:人肌燗
・30℃前後:日なた燗

《常温》
・20℃前後:冷や

《冷酒》
・15℃前後:涼冷え
・10℃前後:花冷え
・5℃前後:雪冷え

ここでも誤解されがちなのが、「熱燗(あつかん)」と言う言葉。単に「温めた日本酒」という意味ではなく、厳密には「50℃(熱々!)に温められた日本酒」のことを言う。お店で「熱燗ください!」と注文されがちだが、本当に飲みたいのは「熱々の酒」だろうか?

「花冷え」とは、「桜が咲く頃に寒さが戻ること。」とても日本らしい美しい響きで、聞くだけでもう美味しそうである。他にも「日なた燗」や「雪冷え」なども、なんとも風情がある。「冷蔵庫で冷やした10℃の日本酒」よりも「花冷えの日本酒」の方が、夜桜の情景が浮かび、なんとなく飲みたくなる。(ただ、わかりやすいのは「冷蔵庫で冷やした・・・」の方。)

日本酒は基本的には「冷酒」であったり「燗」にしたりと好みの温度で楽しめば良いのだが、そのお酒の良さを引き出して存分に味わうには「おすすめの温度」というものがある。

例えばあまり「燗」に向かないのは、華やかな香りの「吟醸酒(ぎんじょうしゅ)※1」とされ、元々香りが強いのでわざわざ燗にする必要がなく、燗にすると香りが立ちすぎて良さが消えてしまい、もったいないとされる。
※1 吟醸酒:吟醸は精米歩合60%以下の米で、大吟醸は精米歩合(※2)が50%以下の米で作られる。
※2 精米歩合:米の表面を削り取って残った部分の割合。数字が小さいほど、米が磨かれて(削られて)いる。雑味が少なくなりやすい。

「燗」にして楽しめるおすすめの酒は大きく分けて2通りで、
・純米酒系:米、米麹、水だけで作られる。「ぬるめの燗(30〜45℃)」にすることで米本来の旨味や香りが引き立つ。
・本醸造酒:醸造アルコールを添加していて、香り控えめですっきりとした味わい。「熱燗(50℃)」や「飛び切り燗(55℃)」にして香りを引き出すのも良い。

今回は「純米酒」を使い、「温度の違い」によって「香りや味わいがどのように変化するのか」を検証する。
実験1.「10℃ 花冷え」:冷蔵庫より 
実験2.「20℃ 冷や」:常温  
実験3.「40℃ ぬる燗」:BONIQ設定41℃で温め
実験4.「50℃ 熱燗」:BONIQ設定51℃で温め

BONIQ設定

実験3. 41℃(設定時間は日本酒芯温が40℃に達するまで)
実験4. 51℃(設定時間は日本酒芯温が50℃に達するまで)

材料


<実験1〜4>
・日本酒(純米酒)  各1合
※滋賀県 冨田酒造「七本鎗(しちほんやり)無農薬純米 無有 火入れ 2021BY」を使用。

<ほか、調理器具など>
・とっくり

《手順》


比較実験

実験1. 「10℃ 花冷え」:純米酒をとっくりに入れ、10℃になるまで室温に置く。
実験2. 「20℃ 冷や」:純米酒をとっくりに入れ、20℃になるまで水に浸けておく。
実験3. 「40℃ ぬる燗」:とっくりに入れた純米酒をBONIQ設定41℃の湯せん(水の状態から)に入れ、芯温40℃になったら取り出す。
実験4. 「50℃ 熱燗」:とっくりに入れた純米酒をBONIQ設定51℃の湯せん(水の状態から)に入れ、芯温50℃になったら取り出す。

その後すぐ、同時にテイスティングを行う。

※純米酒は全て冷蔵庫から取り出して使用する。
※BONIQ設定が狙った「40℃」や「50℃」ではなく「41℃」と「51℃」なのは、BONIQ機器と芯温計の測定誤差により、芯温計の表示が永久に狙った温度に達しない事態を避けるため。
※実験3、4について、湯せんは(この実験以外で)カップ酒や瓶ごと行う可能性もあることから、冷えたガラスを急な温度差の湯せんに入れて割れないよう、湯せんが水の状態から入れることで統一する。

<BONIQセット時>
※肉、魚(生食用を除く)は種類と厚みに応じて加熱設定を変更する。参照:「低温調理 加熱時間基準表
※食材全体がきちんと湯せんに浸かるよう、十分な水量を用意する。
※容器の首まで浸かるようにする。下限水位に足りない場合は底上げをする。
BONIQ 低温調理コンテナ:コンテナラック、トレーを使用する。
:耐熱性のココットなどを逆さに置く。

<BONIQ投入時>
※容器の首まで湯せんに浸かるようにする。
※高温・長時間調理時は、湯せんにカバーをして水位減少を防ぐ。
BONIQ 低温調理コンテナ:コンテナルーフを使用する。
:ラップを使用する。

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比較実験結果

結果は・・・

実験3. 「40℃ ぬる燗」は湯せんが水の状態からとっくりを浸けて、29分後に「40℃」に達した。
実験4. 「50℃ 熱燗」は31分後に「50℃」に達した。

実験1.「10℃ 花冷え」:
香りは閉じていておとなしい。味わいはシャープで繊細、苦味が前面にある。やわらかさも垣間見えるが、あまりフレンドリーではなく凛とした印象。

実験2. 「20℃ 冷や」:
香りに甘やかさが出てきた。味わいは丸みのある旨味に加え、苦味も感じる。やわらかく優しさもあるが、やはり凛とした印象。

実験3. 「40℃ ぬる燗」:
断然香りが立ちのぼる。丸みのある米の甘みと旨味を感じ、良い意味での苦味が味わいに複雑さを与えている。丁寧に作られたこの酒の良さが断トツで引き出されている。やわらかくなめらかで、じんわり染み入るよう。作り手はきっとこの味わいを味わってもらいたかったのでは、と想像できる。

実験4. 「50℃ 熱燗」:
香りが立ちのぼるが、アルコールの香りも一緒に上ってくる。「実験3. ぬる燗」で感じられた米の甘みや旨味が一気に奥に隠れてしまった。「実験1. 花冷え」の時に感じた同じタイプの苦味がこちらにもある。良く言うと「キレがある」が、せっかくのこの酒の良さが分かりにくくなってしまった。

この4つの温度帯を比較すると、別の酒と言っても良いほどそれぞれの印象が違う。
この酒(滋賀県 冨田酒造「七本鎗(しちほんやり)無農薬純米 無有 火入れ 2021BY」)に関して言うと、圧倒的に「実験3. ぬる燗」が酒本来の良さを味わえたし、断トツで美味しい。

他の酒で比較すると、良さが引き出される温度はまた違ってくるだろう。
好きな飲み方は人それぞれだから好きな温度で楽しめば良いのだが、それでもやはり、そのお酒の良さが一番引き出される温度を知った上で楽しむ方が、粋ではないかと考える。

※本レシピはアルコールです。お酒は20歳になってから。未成年の飲酒は法律で禁止されています。法律と適量を守って、お楽しみください。

参考文献
・山同敦子、めざせ!日本酒の達人 -新時代の味と出会う、ちくま新書、2014、p.122
・君島哲至(監修)、日本酒完全ガイド、池田書店、2011、p.35、p.62、p.99〜102
・冨田酒造有限会社、七本槍、富田酒造公式サイト、2024/5/19参照
https://www.7yari.co.jp

《作った感想》
今回の実験で使用したのは滋賀県にある冨田酒造の「七本鎗(しちほんやり)無農薬純米 無有 火入れ 2021BY」(酒米:滋賀県産玉栄100% 精米歩合:60%)です。460年以上の歴史のある酒蔵で少量に厳選され作られています。

今回の実験で、温度によってお酒の香りや味わいがこんなにもガラッと変わるということに驚きました。このような結果となりましたが、他のお酒で行えば、良さが引き出される温度が違ってくるでしょう。
最初は冷酒で飲んで、次はグラスに入れて温度を上げて飲んだりというのも楽しいですね。
今回の比較実験を、皆様のお好みを見つける目安にしていただければ幸いです。

質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^

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【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。


また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防

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小野寺 桂子
大学卒業後にフレンチを学びにル・コルドン・ブルー・ロンドンへ留学。 その後、La Maison Courtineパリにて料理人をした後、フレンチの鉄人坂井氏がプロデュースの大阪の名門フレンチ ラ・ロシェルにて従事。食育インストラクター・アスリートフードマイスター3級・日本ソムリエ協会公認ソムリエ。お酒にマッチするBONIQレシピを提案させていただきます。
小野寺 桂子

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  • 実験3. 41℃(設定時間は日本酒芯温が40℃に達するまで)
  • 実験4. 51℃(設定時間は日本酒芯温が50℃に達するまで)

材料一覧

  • <実験1〜4>
  • ・日本酒(純米酒)  各1合
  • ※滋賀県 冨田酒造「七本鎗(しちほんやり)無農薬純米 無有 火入れ 2021BY」を使用。
  • <ほか、調理器具など>
  • ・とっくり

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