・BONIQ設定
・材料
・比較実験
・比較実験結果
・作った感想
「ピーマン」といえば、夏を代表する野菜の一つである。
特にβ-カロテンやビタミンCが豊富で、レモン1個分相当のビタミンCが大きめのピーマン1個で摂取できる。
ビタミンCはコラーゲンを作るために必須で、ビタミンCが不足すると、コラーゲンが不足することになる。人間の体に存在するタンパク質の約1/3がコラーゲンなので、不足すると健康な体を保てなくなる。またビタミンCは鉄の吸収を高めるので、女性やアスリートは積極的に摂取したい栄養素である。
風邪や生活習慣病の予防や肌の調子を整えるのに効果的で、メラニン色素の生成を抑え、日焼け予防、シミ対策に有効ということだ。一方、ピーマンは「子供が嫌いな野菜」の代表格でもある。嫌われる理由はなんと言ってもその「青臭い香り」と「苦味」であろう。
「青臭い香り」は「ピラジン」という香り成分に由来するが、実はこの青臭いピラジンこそ血液をサラサラにし、動脈硬化を予防する効果があると言われている。
またポリフェノールの一種の「クエルシトリン」が「ピラジン」と結び付くことで、「苦味」に変わる。
この「クエルシトリン」は血圧を下げる効果があり、抗炎症作用が期待できるという。
このように、敬遠されがちな「青臭さ」や「苦味」の成分こそが、実は体に良い成分なのである。こんなに栄養が豊富に含まれていながら、少なからぬ子供たちに嫌われている。
そこでBONIQの低温調理でピーマンの旨味を引き出し、子供たちが飛びつくような美味しいピーマンに仕上げたい。
それにはまずピーマンの「青臭さ」と「苦味」を軽減させる必要がある。
青臭さと苦味はピーマンの細胞が壊れることで際立つようだが、ピーマンの「カットの仕方」や「下処理」で青臭さと苦味を減らすことができるのか。ピーマンの
実験1. 種は取り除き、繊維に沿って「縦切り」にする
実験2. 種は取り除き、繊維に対して垂直に「横切り」にする
実験3. 種は取り除き、「横切りを塩もみ」してさっと水で流す
実験4. 「縦半分にカットし、種付き」のままとするそれぞれをBONIQで「80℃ 10分」低温調理する。
繊維に沿った「実験1. 縦切り」にするとピーマンの繊維を壊しにくいので、「青臭さ」や「苦味」の成分が出にくくなるのではないか?
繊維に対して垂直に「実験2. 横切り」にした場合と比べてどうなるか?
また、「実験3. 横切りにし、塩もみ」はあえて繊維を断ち切ることで「青臭さ」と「苦味」の成分が出やすいようにし、塩でもんで水で流すことで成分ごと流してしまおうという意図がある。
「実験4. 縦半分にカットし、種付き」は、断面を少なくするとどうなるか?種には果皮の10倍のピラジンが含まれるとされているが、取り除かなくても口に残らないか?
苦味や青臭さはどうなるか?を検証する。さて、この下処理の仕方で味わいに違いが出るだろうか?
BONIQ設定
80℃
0:10(10分)
材料
<実験1〜4>
・ピーマン 各2個<実験3のみ>
・塩 小さじ1/4<ほか、調理器具など>
・ボウル/容器(実験3用)
《手順》
比較実験
<実験1、2>
ピーマンの種は取り除き、
実験1:繊維に沿って、5mmの縦切りにする。
実験2:繊維に対して垂直に、5mmの横切りにする
<実験3>
ピーマンの種は取り除き、
5mmの横切りにしてボウルに入れ、水分が出てくるまで3分程塩もみする。
その後水でさっと洗い流し、水気をしぼる。
<実験4>
縦半分にカットし、種付きのままとする。
それぞれ耐熱袋に入れ、80℃ 0:10(10分)低温調理する。
BONIQの設定時間終了タイマーが鳴ったら袋を取り出し、比較試食を行う。
ちなみに、元々の個体差による味わいの違いがないか確認するため、低温調理前に各実験のピーマンを生で食べてみたところ、
どれもそんなに苦くない!縦切りでも横切りでもさほど違いがわからない!
最近ではピーマンは品種改良されてそんなに苦くないらしい・・・。
もしかしてこの実験結果は違いが出ず、あまり意味がないのか?(ボツになるのか?)と不安な展開に。
そこで4歳の子供に生ピーマンを食べてもらったところ、1mm程しか食べていないにも関わらず、「苦くて変なにおいもする」とのことだった。
もし実験で苦味の違いが出なくとも、ピーマンが美味しくなり、子供でも食べられる方法を絶対に突き止めねば!と思いながらスタート。
<BONIQセット時>
※肉、魚(生食用を除く)は種類と厚みに応じて加熱設定を変更する。参照:「低温調理 加熱時間基準表」
※食材全体がきちんと湯せんに浸かるよう、十分な水量を用意する。
※高温・長時間調理時は蒸発による水位減少を防ぐため、最大水量を用意する。
<BONIQ投入時>
※袋内に気泡が残らないよう湯せんに入れながらしっかり空気を抜き、密封する。(参考:動画「低温調理用バッグの密封方法」、記事「ベストなバッグ密封の仕方 比較実験」)
※食材全体が湯せんに浸かるようにする。浮いてくる場合は、
・BONIQ 低温調理コンテナ:コンテナラック、トレーを使用して完全に沈める。
・鍋:耐熱性の瓶や重しを乗せて完全に沈める。
※高温・長時間調理時は、湯せんにカバーをして水位減少を防ぐ。
・BONIQ 低温調理コンテナ:コンテナルーフを使用する。
・鍋:ラップを使用する。
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比較実験結果
「実験1. 縦切り」と「実験2. 横切り」を比較すると、食感は「縦切り」はシャキシャキ感がかなり強い。子供が食べるには少し固すぎるか。「横切り」はちょうどよい歯ごたえになっている。青臭さや苦味の点では、青臭さは加熱されたからか、どちらも生の時より減っている。「縦切り」の方が苦味が抑えめ、「横切り」の方が後から苦味が追いかけてきて舌に残った。
「実験3. 横切りを塩もみ」は、ややしんなりやわらかい食感、青臭さと苦味はかなり減っているように感じる。塩もみした分、甘みも引き出されて美味しくなっている。繊維に対して垂直に切った断面から青臭い「ピラジン」と苦味を引き起こす「クエルシトリン」が流れ出たため、青臭さと苦味が減ったのだろう。
「実験4. 縦半分にカットし、種付き」は、驚くほどジューシーで美味しい!同じ野菜でも切り方が違うだけで、こんなにジューシーになるというのは大発見!苦味や青臭さは「実験1. 縦切り」と「実験2. 横切り」よりも感じない。種が口に残るということもなく、気にならない。
以上の結果から、ピーマンが苦手な子供には「実験3.横切りを塩もみ」が、「食感」「青臭さ」「苦味」の点で、食べやすいのではないかと感じた。実際に4歳の子供は「まだちょっと苦いけど美味しくなった」とのこと。
塩味だけのピーマンが「美味しくなった」くらいなので、他の調味料を入れて低温調理すれば、かなり美味しくできるのではと期待できる。
「青臭さ」「苦味」が減ったということは栄養価の点では少し減ってしまったということになるが、ピーマンを食べられない子供にまずは食べてもらうという観点では、やってみる価値はあると思う。
「実験1. 縦切り」は少し歯ごたえがありすぎるので、設定時間を1〜2分プラスするか設定温度をやや高くしても良いかもしれない。「実験2. 横切り」はちょうど良い硬さであるが、苦味はしっかり出てこれはこれで美味しいので、大人向けでピーマンの苦味をアクセントにする料理に向いていると感じた。(参考:「58℃,80℃ 炒めない チンジャオロース」)
ピーマンに全く抵抗がない場合は、「実験4. 縦半分にカットし、種付き」が断然おすすめ。こんなにジューシーなピーマンは食べたことがない、というくらいの仕上がりであったので、調味料を入れるとかなり美味しくなると思う。
ただ、ピーマン半分サイズは小さな子供がかぶりつくには食べにくいので、その場合は設定時間を長くするか、温度をやや高くすると良いかもしれない。(大人なら同設定で問題ない。)
ちなみに・・・ピーマンを切らずに「丸ごと」調理するレシピも世間にはたくさんあるが、私は「縦半分カット」をおすすめする。なぜなら、まれにピーマンの中に幼虫が入っていることがあるから。外観からはほとんどわからず、切って初めて中から出てくることがある(汗)。特に家庭菜園のものや近所の畑で採れたものなどは、必ず切って中を確認した方が良い。
「実験4. 縦半分にカット」なら「ジューシーな美味しさ」も「安心」もどちらも確実である。
参考文献
・飯田薫子・寺本あい、「一生役立つ きちんとわかる栄養学」、西東社、2022、p.114,p.234
・東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部、「完全版 その調理、9割の栄養捨ててます!」、世界文化社グループ、2024、p.78-79
《作った感想》
どの実験のピーマンも「生」の状態ではほとんど違いがなく、正直どれもそんなに苦くなく、実験は成立しないのでは?と思いましたが、低温調理後はそれぞれの違いがはっきり出る結果となりました。
「実験3. 横切りを塩揉み」が一番「青臭さ」と「苦味」を減らすことができたので、早速これを元に子供が競って食べたくなるような(!)レシピを考案いたします。
また「実験4. 縦半分にカットし、種付き」はそのジューシーさの違いはかなり驚きでした。こちらはピーマンの良さを存分に生かすべく、大人向けの一品を考案したいと思います。
質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^




【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。
また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防


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