豚肉レシピ

70℃〜 豚スペアリブの低温調理 温度比較実験

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(1)


BONIQ設定
材料
比較実験
比較実験結果
作った感想

「豚のスペアリブ」は調味液につけ込んでおいて焼けばよく、BBQでも気軽にできる定番メニューとされる。

しかし、私はスペアリブは調理が難しい食材の一つだと思っている。なぜなら骨の周りに火が入りにくく、骨の周りまでしっかり火を入れようとすると、身の部分に火が入りすぎて肉汁が失われパサつきがちである。

また、スペアリブの大きさはまちまちで、小さく細いものもあれば、大きく長いものもあり、火の入り方が変わってしまう。焼いただけだと、骨の周りに身が張り付いていて食べにくい。手で豪快にかぶりつくのが醍醐味という見方もあるが私は内心、手が汚れるのはイヤだ。すぐ手が洗える状況なら良いが、特にアウトドア、キャンプの時などできることならば手を汚したくない(アウトドアでもだいたい料理担当で手を使うから、ギトギトにしたくないというのもある)。

圧力鍋を使えば骨からの身離れがよいスペアリブを仕上げられるが、高温になりすぎるので身から肉汁が流出してパサつき、繊維質になってしまう。あちらを立てればこちらが立たない。

スペアリブはそういう繊細な料理じゃない!多少の火の入り方は気にしないで豪快に楽しむもんだ!と突っ込まれるかもしれないが、料理人的にはやはり火の入り方が気になるのである。

BONIQを使って身はやわらかくジューシー、骨からつるりと身離れが良くて食べやすい“完璧な”スペアリブを仕上げたい。
ただこのスペアリブ、正直なところ適正な調理温度がまだ定まっておらず、BONIQレシピでも77℃〜88℃まである。今回はスペアリブの最適温度を探るべく、4つの温度帯で低温調理を行う。

国産の豚スペアリブを耐熱袋に入れ、

実験1. 70℃
実験2. 77℃
実験3. 82℃
実験4. 88℃

でそれぞれ低温調理する。設定時間はそれぞれ“竹串が身にスッと入るところまで”とする。

果たして結果はいかに。

BONIQ設定

実験1. 70℃
実験2. 77℃
実験3. 82℃
実験4. 88℃

※設定時間はそれぞれ竹串が身にスッと入るところまでとする。

材料


<BONIQする材料>
・豚スペアリブ  各100g(3本)
※国産を使用。

<ほか、調理器具など>
・竹串
・氷

《手順》


比較実験

耐熱袋に豚スペアリブを入れ、それぞれの温度で低温調理する。

実験1. 70℃
実験2. 77℃
実験3. 82℃
実験4. 88℃

低温調理中に様子を見ながら、竹串が身にスッと入るやわらかさになったら湯せんから取り出す。
袋ごと冷却し、全部の実験が出揃うまで冷蔵庫で待機。
全部の実験が揃ったら再度70℃で30分温め、比較試食を行う。

※再度温めの温度は、この実験の最低温度の70℃とした。もっと高い温度で温めると、それより低い温度で調理したものの仕上がりが変わってしまうからと、味の感じ方が全て同じとなるよう、全て同温度で温めた。

<BONIQセット時>
※肉、魚(生食用を除く)は種類と厚みに応じて加熱設定を変更する。参照:「低温調理 加熱時間基準表
※食材全体がきちんと湯せんに浸かるよう、十分な水量を用意する。
※高温・長時間調理時は蒸発による水位減少を防ぐため、最大水量を用意する。

<BONIQ投入時>
※袋内に気泡が残らないよう湯せんに入れながらしっかり空気を抜き、密封する。(参考:動画「低温調理用バッグの密封方法」記事「ベストなバッグ密封の仕方 比較実験」
※食材全体が湯せんに浸かるようにする。浮いてくる場合は、
BONIQ 低温調理コンテナ:コンテナラック、トレーを使用して完全に沈める。
:耐熱性の瓶や重しを乗せて完全に沈める。
※高温・長時間調理時は、湯せんにカバーをして水位減少を防ぐ。
BONIQ 低温調理コンテナ:コンテナルーフを使用する。
:ラップを使用する。

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比較実験結果

結果は・・・

実験1. 70℃ → 24時間
実験2. 77℃ → 10時間
実験3. 82℃ → 8時間
実験4. 88℃ → 5時間

でそれぞれ竹串がスッと入るほどになった。

ただ、「実験1. 70℃」は竹串がスッと入るとはいえ、実験2〜4よりも刺す手応えが残った。スタートして15時間目から様子を見ていたが、24時間経ってもあまり状況が変わらず、これ以上やっても大幅にやわらかくならなさそうだったので24時間で切り上げた。

「実験1. 70℃ 24時間」は一番低温にも関わらず、身が繊維質になり肉汁が失われている。ゆえに固さもある。24時間という時間をかけた分、肉汁が流出してしまったか。脂部分はやわらかいが、身がパサつく。骨は力をかけるとほろっと外れた。

「実験2. 77℃ 10時間」は身はジューシーでやわらかく、脂部分はプルプル。包丁で切った断面が一番スパッと切れた。つまり、身が繊維質になっていない(=肉汁を失っていない)ので包丁が引っかからないということ。骨は少し押すとほろっと外れた。

「実験3. 82℃ 8時間」は身は繊維質になってはいるが、パサつくという程ではない。脂部分はプルプル。骨はちょっと押しただけであっさり外れた。

「実験4. 88℃ 5時間」は身がかなり繊維質になっており、もう少し加熱すればコンビーフとかリエットが作れるくらいである。包丁で切ろうとすると、断層が地滑りを起こすように繊維になった身がズレてしまう。脂部分はプルプルとやわらかいが、身はパサつきがある。肉を耐熱袋から取り出す時点で、骨が取れそうになるほど身離れは良い。

実験1. 70℃ → 24時間
実験2. 77℃ → 10時間
実験3. 82℃ → 8時間
実験4. 88℃ → 5時間

脂のプルプル:実験4>実験3 ≒ 実験2> 実験1
身のやわらかさ:実験2>実験3>実験4>実験1
ジューシーさ:実験2>実験3>実験4>実験1

試食して驚いたのが、設定温度・時間が違うだけで味が違うのである!

塩も何も加えていない、豚スペアリブ単体でBONIQしたにも関わらず、仕上がりの味が違う。

実験2が一番、身も脂も甘く美味しい。
実験3も似ているが、実験2には劣る。実験1と実験4も悪いわけではないが、断然実験2に甘みや旨味が劣る。これは大発見!!

単なる個体差かもしれないと思い、他のスペアリブ個体も食べ比べてみたが、明らかに実験2が美味しい。

甘み・旨味:実験2>実験3>実験4>実験1

総合した美味しさ:実験2>実験3>実験4>実験1

圧倒的、実験2の勝利。

実験3はアリ。

ただ、設定時間は2時間の差、仕上がりの差はそれ以上なので、断然「実験2. 77℃ 10時間」がおすすめ。

実験4は脂はプルプルな分、そのコントラストで肉汁を失った身の繊維質が余計に際立ってしまい、残念。
実験1は24時間かけた分のリターンが見込めないので、ナシ!

肉は加熱により「1. タンパク質が変性して水分が失われ」、「2. コラーゲンが溶ける」。タンパク質が変性することで食感を与えるが、68℃より高温になると硬くなり、水分が失われ始める。スペアリブのようにコラーゲンが多い肉は硬くゴムのような食感なので、コラーゲンを溶かさないとやわらかくならない。コラーゲンが溶けると一部がゼラチンに変化し、独特のとろりとした食感となる。コラーゲンが溶ける温度は70〜80℃とされる。

つまりコラーゲンが多い硬い肉を調理するには、極力「1. タンパク質を変性させ過ぎずに水分を保つ」と同時に、「2. コラーゲンが溶ける」温度で調理する必要がある。

ところが、コラーゲンが溶ける温度で一番低い温度の70℃が良いかというと、全く違った。コラーゲンを溶かすのに長時間かかってしまい、その分肉汁が流出してしまっている。

80℃を超えるとタンパク質が変性し過ぎて水分が失われ、肉が繊維状になる。80℃を超えれば超えるほど、圧力鍋で仕上げた時のように、脂身はやわらかくはなるが、肉汁は失われて繊維状になり、どうしてもパサついてしまうということである。

「コラーゲンを十分に溶かし、肉汁も極力失わない」最適な温度と時間が「77℃ 10時間」ということになる。

参考文献
Jeff Potter、水原 文、Cooking for Geeks 第2版ー料理の科学と実践レシピ、オライリージャパン、2016、p.208−211

《作った感想》
今回の実験で、「身はやわらかくジューシーで肉汁が失われておらず、骨からつるりと身離れが良くて食べやすい完璧なスペアリブ」が見つかりました。「77℃ 10時間」が断然おすすめです。(もっと噛みごたえと肉肉しさを残すなら「77℃ 旨辛!毛沢東スペアリブ」のように「77℃ 5時間」からOKです。)

今回一番驚いたのは、仕上がりの味が違うという大発見!「77℃ 10時間」は脂も身も甘みと旨味が違います。他の実験に比べて肉汁が一番失われていないので、肉本来の旨味が肉にとどまっているのではないでしょうか!?これなら、BBQだろうが、煮込みだろうが怖いものはありません。これだから低温調理は面白い!

このような実験でより良い方法が見つかると、BONIQでは既に公開されているレシピもアップデートして行きます。皆さまにとってよりわかりやすく、さらに美味しく低温調理をお楽しみいただけましたら幸いです。

質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^

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【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。


また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防

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小野寺 桂子
大学卒業後にフレンチを学びにル・コルドン・ブルー・ロンドンへ留学。 その後、La Maison Courtineパリにて料理人をした後、フレンチの鉄人坂井氏がプロデュースの大阪の名門フレンチ ラ・ロシェルにて従事。食育インストラクター・アスリートフードマイスター3級・日本ソムリエ協会公認ソムリエ。お酒にマッチするBONIQレシピを提案させていただきます。
小野寺 桂子

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  • 実験1. 70℃
  • 実験2. 77℃
  • 実験3. 82℃
  • 実験4. 88℃
  • ※設定時間はそれぞれ竹串が身にスッと入るところまでとする。

材料一覧

  • <BONIQする材料>
  • ・豚スペアリブ  各100g(3本)
  • ※国産を使用。
  • <ほか、調理器具など>
  • ・竹串
  • ・氷

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