BONIQマニアにおくる、低温調理の疑問あれこれの検証。
日々低温調理をしていると、食材がこんなに美味しくなるのか!という感動がある一方、本当にこれで良いのか?もっとベストな方法があるのではないか?という疑問も同時にわいてくる。
最近では低温調理のメソッドに関する情報が増えつつあるが、それが本当に正しいのか?
実際調理をする中で出てきた疑問を検証してみる。“幽庵焼き”は同量のしょうゆ・酒・みりんを入れた漬け地(柚子なのど柑橘で風味付けすることが多い)に、肉や魚などを漬け込んで焼く料理である。江戸時代の茶人で、食通でもあった北村祐庵が考案したとされている。
通常はバットなどに入れた漬け地に食材を漬けるが、その時に満遍なく味が行きわたるように途中で食材を裏返す。そしてその後、汁気を切って焼き上げる。
漬け地をバットに入れて食材を漬けるのではなくフリーザーバッグを使えば、バッグに漬け地と食材を入れて空気を抜き、裏返す必要もなく漬け地を行き渡らせて漬けられる。また漬け地も少ない量で済む。
そこで考えた。せっかくフリーザーバッグの空気を抜いて漬け地に漬けたのだから、漬け地ごと低温調理するとどうなるのか?
しかしそれでは通常より長時間漬け地に浸かっていることになるので、味が濃くなりすぎないか?
それでは、“漬け地に漬ける”と“低温調理”を同時できないのだろうか?つまり食材を漬け地に漬けておくのではなしに、漬け地と共に低温調理するとどうなるのか?牛ヒレを使って幽庵焼きの低温調理比較実験を行う。
味が濃くなりすぎてしまうのか?牛ヒレに漬け地が中まで浸透した“煮物”のようになってしまうのか?牛ヒレを
①漬け地に漬ける(1時間)→ 汁気を切ってBONIQ(2時間35分)
②漬け地に漬ける(1時間)→ 漬け地ごとBONIQ(2時間35分)
③漬け地と一緒にBONIQ(2時間35分)※BONIQ設定温度はすべて、牛ヒレをミディアムレアに仕上げる57℃とする。また設定時間は厚さ2㎝の牛肉が充分に加熱殺菌できる時間で設定した。
※通常幽庵焼きは食材を漬けた後に焼くが、今回は漬け地と低温調理の関係を見るための実験であるので「最後に焼く」工程は省略する。BONIQ設定
57℃
2:35(2時間35分)材料
・牛ヒレ 各130g(厚さ約2cm。オーストラリア産タスマニアビーフを使用。)
・しょうゆ 各大さじ2
・酒 各大さじ2
・みりん 各大さじ2当レシピの栄養素
栄養素(1人分) 1日の推奨摂取量 低糖質レベル ★★★(一食:糖質5g以下) カロリー 194 kcal - 糖質 3.3 g - タンパク質 27.1 g 体重 x 1.2g ~ 1.5 g 脂質 6.2 g - 食物繊維 0 g 20 g 以上 カリウム 501 mg 3500 mg 以上 カルシウム 6.9 mg 650 mg 以上 マグネシウム 34.6 mg 350 mg 以上 鉄分 3.7 mg 7.5 mg 以上 亜鉛 3.7 mg 10 mg 以上
《手順》
①牛ヒレを漬け地に漬ける(1時間)→ 汁気を切ってBONIQ(2時間35分)
フリーザーバッグにしょうゆ・酒・みりんを入れて漬け地を作り、牛ヒレを入れて空気を抜いて密封する。
冷蔵庫に入れ1時間漬ける。
フリーザーバッグの中の漬け地を空けて牛ヒレだけにし、空気を抜いて密封する。
BONIQ(57℃ 2時間35分)で低温調理する。
フリーザーバッグの密封方法:https://youtu.be/N-t1ox7mox0
②漬け地に漬ける(1時間)→ 漬け地ごとBONIQ(2時間35分)
フリーザーバッグにしょうゆ・酒・みりんを入れて漬け地を作り、牛ヒレを入れ空気を抜いて密封する。
冷蔵庫に入れ1時間漬ける。
漬け地を入れたままBONIQ(57℃ 2時間35分)で低温調理する。
③漬け地と一緒にBONIQ(2時間35分)
フリーザーバッグにしょうゆ・酒・みりんを入れて漬け地を作り、牛ヒレを入れ空気を抜いて密封する。
すぐにBONIQ(57℃ 2時間35分)で低温調理する。
比較実験結果
それぞれ、以下のような結果となった。
「①漬けた後、汁気を切ってBONIQ」は上品に漬け地の風味が付いているのに対し、「②漬けた後、漬け地と共にBONIQ」は味が付きすぎている。これはこれで美味しいが、せっかくの牛ヒレを使うのだから肉本来の味わいをもっと残す方が良い。例えばとてもクセのある肉(ジビエとか・・・)の場合には使える方法か。
「③漬けずに、漬け地と共にBONIQ」はほどほどに風味がついており、「牛ヒレを漬け地に1時間漬けおく」という工程を省き、“漬け地に漬ける”と“低温調理”が同時にできることを証明した。①に比べてやや味が濃く仕上がっており、漬け地を半分に減らすくらいでちょうど良いのではないか。①~③でも既に、一般的な幽庵焼きの漬け地の半分以下の漬け地量であるが、さらに少なくて良いかもしれない。
また、①~③の漬け地はみりんと酒を煮切らないで使ったが、低温料理ではアルコールがフリーザーバッグの中に充満して蒸発できないため、ややアルコール臭くなってしまう。①ではそんなに気にならなかったが、②③はややアルコール臭く感じた。やはり酒とみりんは煮切って使った方が良い。
そこで③を改良して
④「漬けずに、半分量の漬け地(みりんと酒は煮切る)と共にBONIQ」を行った。
※ここの半分量とは牛ヒレ130gに対して、酒・しょうゆ・みりん各大さじ1。
アルコール臭さはなく、味も牛ヒレ本来の旨みを生かせるほど上品で程良い!
「牛ヒレを漬け地に1時間漬けおく」という工程を省き、“漬け地に漬ける”と“低温調理”が同時にできることを③よりもさらに証明できた。“アルコール臭くなく”、“煮物”のようにもならず、素材本来の旨みを生かす“程よい風味”が付けられる、完璧な仕上がりと言える。
従来の方法では漬け地に食材がきちんと浸かるならば、漬け地の量が多くても少なくてもあまり味の濃さに影響はない。しかし、低温調理の場合はフリーザーバッグ内で調理を行うので、肉からドリップが出てくる。それゆえ、漬け地がドリップで薄まる度合いによって、つまり漬け地の量で肉への味の付き方が変わるのだと考えられる。
また今回は牛ヒレで行ったが、牛が安全に低温調理できる設定時間と、漬け地から牛へ味の付くスピードがちょうど合ったから成功したとも言える。
他の食材ではどうなのか?魚ではもっと調理時間が短くなるが、今回の④の方法で上手くいくのか?今後さらなる研究が必要である。
《作った感想》
フリーザーバッグでの低温調理は、空気を抜くことで調味液を食材に浸透しやすくし、調理と同時に味を付けられるというメリットがあります。
今回はオーストラリア産のタスマニアビーフを使いましたが、和牛ヒレでは脂と肉の風味を生かせるよう、漬け地量はもっと少なくても良いかもしれません。いずれにせよ従来よりもかなり少ない漬け地の量で、食材を事前に漬けておくことなしに“漬ける”と“低温調理”が同時に可能であることが分かり、低温調理の可能性がさらに広がりました。
BONIQ管理栄養士による栄養アドバイス
牛肉にはビタミンB2やナイアシンが多く含まれています。
ビタミンB2は皮膚や粘膜の健康を守る働きをします。口角炎や口内炎など、皮膚の炎症が気になる人には不足している栄養素かもしれません。
また、ビタミンB2は糖質・脂質・タンパク質を代謝するために必要な補酵素として重要な役割を担っています。
ナイアシンもビタミンB群の中の一つであり、ビタミンB2と同様に糖質・脂質・タンパク質の代謝に必要な栄養素です。
また、代謝だけにかかわらず、DNAの修復や合成・細胞の分化・栄養素の生合成に関与しています。
調理する際に注意すべき点は、これらビタミンB群は熱には強いものの、水溶性のビタミンであるということです。
その点、低温調理は直接水やお湯に触れて調理する必要がないことから、ビタミンB群の損失を抑えることができる調理法と言えます。
質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^
【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。
また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防
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- 低温調理のルール 〜6つのポイント〜 - 2020年6月3日
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