BONIQマニアにおくる、低温調理の疑問あれこれの検証。
日々低温調理をしていると、食材がこんなに美味しくなるのか!という感動がある一方、本当にこれで良いのか?もっとベストな方法があるのではないか?という疑問も同時にわいてくる。
最近では低温調理のメソッドに関する情報が増えつつあるが、それが本当に正しいのか?
実際調理をする中で出てきた疑問を検証してみる。BONIQを使った自家製ベーコン作りの実験第2弾。
ベーコンはとても身近な食材であるが、一般的に販売されているベーコンやハムは化学調味料や保存料などの添加物が多い。安全性は確立されているというが、経験からして使用が少ないものの方が美味しいものが多いと思っている。そしてなるべく使用が少なくて美味しいものを探して買おうとすると、すごく値段が張るのである。
そうとなれば、自分で美味しいベーコンを作りたい。従来のベーコンの作り方は
「塩漬け→塩抜き→風乾燥→燻製」である。これをBONIQを使って
「塩漬け→塩抜き→(風乾燥)→スモークリキッド(燻製風味の調味料)を入れて低温調理」の工程で美味しいベーコンが出来ないだろうか?
従来のベーコン作りの工程で「風乾燥」をするのは、保存性を高めるためと、水分が多すぎると燻煙が食材に入り過ぎてエグくなったり、化学反応が起きて酸っぱくなってしまったりするのを防ぐため、と言われている。
今回BONIQで行うベーコン作りではフリーザーバッグに豚バラをスモークリキッドを入れて行うが、「風乾燥」しなくてもエグくなったり酸っぱくはならないのではないか?なぜなら「サラダフィッシュ ~スモークさば~」の時は特にエグみや酸味などは感じなかったからである。
エグくなったり酸っぱくなったりしないはずなので「風乾燥」は理論上は必要ないが、もしかしたら水分を抜いた方が身が引き締まって旨みが凝縮するかもしれない。前回の「自家製ベーコン 塩漬け濃度・日数比較実験」では塩漬け濃度を「2%」と「8%」、日数を「3日」と「7日」、の4パターンで行い、塩抜き後に「低温調理70℃ 15時間」を行って仕上がり具合を比較した。
その結果、「塩分8% 7日間」のものが一番身が引き締まり、ベーコンらしい食感・味わいとなった。
一般的なベーコンに比べてかなり身が柔らかく仕上がったので、そこまで柔らかくなくても良いのではないか、BONIQの時間はもっと短くてもよいのかもしれないと考え、70℃ 10時間のパターンも行うことにした。10時間という時間は化学的根拠などはないのだが、夜にBONIQにかけて、朝に上げられれば便利だと思った次第である。今回は「(風)乾燥をする」場合と「しない」場合、BONIQ70℃で「10時間」と「15時間」の4パターンを行い、極上の低温調理自家製ベーコンができる方法を探る。
豚バラを、「塩漬け→塩抜き」した後、
①乾燥 → BONIQ70℃で10時間
②乾燥なし → BONIQ70℃で10時間
③乾燥 → BONIQ70℃で15時間
④乾燥なし → BONIQ70℃で15時間乾燥の工程は、網に置いたベーコンをそのまま冷蔵庫24時間に入れて乾燥させる。
低温調理はフリーザーバッグに豚バラとスモークリキッドを入れて行う。これでベーコン作りの工程が固まれば、いよいよゴールが見えてくる。
BONIQ設定
①②70℃ 10:00(10時間)
③④70℃ 15:00(15時間)材料
・国産豚ばら(ブロック/塊肉) 各250g
・塩 各20g(肉の重量の8%)
・スモークリキッド 各小さじ1当レシピの栄養素
栄養素(1人分) 1日の推奨摂取量 低糖質レベル ★★★(一食:糖質5g以下) カロリー 386 kcal - 糖質 0.1 g - タンパク質 14.2 g 体重 x 1.2g ~ 1.5 g 脂質 34.6 g - 食物繊維 0 g 20 g 以上 カリウム 250 mg 3500 mg 以上 カルシウム 3 mg 650 mg 以上 マグネシウム 15 mg 350 mg 以上 鉄分 0.6 mg 7.5 mg 以上 亜鉛 1.8 mg 10 mg 以上
《手順》
比較実験
豚バラに竹串(フォークなど)でピケする。
塩(肉の重量の8%)を全面にすり込む。
キッチンペーパーを巻き、ラップでぴったりくるんで冷蔵庫で寝かせる。
※キッチンペーパーとラップは毎日新しいものに取り換える。
冷蔵庫から取り出して流水(ちょろちょろ)で約10時間塩抜きをする。(端を切って焼き、ちょうど良い塩加減になるまで)
水分をペーパーで拭く。
①③はそのまま網の上に置いて冷蔵庫に入れ、24時間乾かす。②④はこの工程は行わない。(全部を同時調理するため、乾燥させない②④にラップを巻いて、①③を待つ。)
フリーザーバッグに豚バラとスモークリキッドを入れて空気を抜いて密封し、BONIQ(70℃ ①②10時間/③④15時間)で低温調理する。
フリーザーバッグの密封方法:https://youtu.be/N-t1ox7mox0
比較実験結果まとめ
それぞれ、以下のような結果となった。
まず、10時間調理した「①乾燥あり/②乾燥なし」と15時間調理した「③乾燥あり/④乾燥なし」を比べると、当たり前とも言えるが15時間の方が柔らかい。前回の「自家製ベーコン 塩漬け濃度・日数比較実験」では15時間のものが柔らかすぎるのでは?と感じたので、10時間くらいでも大丈夫なのかと考えたが、スモークリキッドが影響したのか15時間の方がちょうどよく柔らかく仕上がった。(前回の実験時は豚バラのみで低温調理を行い、スモークリキッドは入れなかった。)
10時間の③④でも一般的な市販のベーコンより柔らかいので、あと5時間待てない事情がある場合は10時間で終了してもOKであるが、せっかくここまで時間をかけてきたので今後のベーコン作りには15時間を採用することにする。
次に乾燥させた①③としていない②④について、同じ調理時間のもの同士を比べると、乾燥させた①③の方がやや身が引き締まっている。また乾燥させていない②④にはかすかな酸味が感じられた。実際にベーコンを燻製して作る場合では、燻煙と水分が化学反応を起こしてエグみと酸味が出るというが、低温調理のスモークリキッドを入れた場合にはごくわずか、酸味が感じられた。しかし、エグみは感じなかった。このわずかな酸味は、同時比較した上でこちらから酸味を探しに行って初めて気づいたもので、比べなければ分からない程度のものである。
柔らかさ:④>③>②>①
酸味:①③≒②④
エグみはどれもなく、酸味はわからないくらいの差、乾燥しない方が柔らかいことなどを考慮すると、わざわざ24時間かけて乾燥しなくても良いと考えられた。
以上、いろいろ書いているがこれらの4つの比較はどれもハイレベルの戦いであり、実はどれもかなり美味しい。焼けば脂が溶けて、噛めば噛むほど凝縮した豚の旨みがジュワっと口の中に広がる。スモーキーな香りも程よく、香ばしい。その中であえて選ぶなら④というわけである。
今後のベーコン作りは、
塩漬け(8%で7日間)→塩抜き(約10時間)→BONIQ 70℃ 15時間
で行うことに決定した。
《作った感想》
この実験を経て、自家製低温調理ベーコンの完成がいよいよ見えてきました。
今回、味と風味付けは塩とスモークリキッドだけでシンプルに行いましたが、控えめに言ってかなり美味しいです。
特別な器具も要らず、BONIQさえあればあればOK。仕上げまでに待ち時間が長いだけで、実はそんなに手間はかかっていません。
次回は究極の自家製ベーコンを完成させたいと思います。
BONIQ管理栄養士による栄養アドバイス
手作りのベーコンは旨味や肉らしさが市販品よりも勝るといいますが、ベーコンを自家製することのメリットは健康面にもあります。
市販品のベーコンの肉の色は、ピンク色味が強くありませんか?あの色は添加物によって色が変化した肉の色なのです。
大量生産する場合、ハムやベーコンの品質を保つために亜硝酸ナトリウムという食品添加物を使います。この添加物は肉の色を鮮やかな赤に保ち、肉の変色を防ぐ働きがあります。
ただ、この亜硝酸ナトリウムは発がん性物質を生成するリスクを持っていることでも有名です。
毎日大量にハムやベーコンを食べなければそれほど心配する必要はありませんが、発がん性がある添加物と聞くと心配になりますよね。
自家製のハムやベーコンを常備できればその心配をせずに済むと考えると、自家製ベーコンにチャレンジしてみても良いのではないでしょうか?
<自家製ベーコンの低温調理 比較実験シリーズ>
70℃ 自家製ベーコン 塩漬け比較実験
70℃ 自家製ベーコン 風乾燥&時間比較実験
<比較実験の結果を元に、究極の自家製ベーコンレシピ>
70℃ 低温調理で安心自家製ベーコン
質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^
【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。
また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防
最新記事 by 小野寺 桂子 (全て見る)
- 低温調理のルール 〜6つのポイント〜 - 2020年6月3日
御礼とご報告です。まず別コラムにて記載されておられた、市販のベーコンを買う際の悩みについては深く共感します。「食品の裏側」等で指摘を信じれば、市販のハム等の製造工程はかなり異常であり、一消費者として「選ばない」選択をするのが正しいのではないかと思いつつも、やはりベーコンはほしいし、添加剤のない商品はありません。比較的少ないものはありますが、それでもどういうものが何の目的でどの程度入っているのかというところは素人には知りようがありません。スモークチップで作ろうとしたことが何度かありますが、あまりうまくいかなかったところ、今回この低温調理+Liquidでやったところ一発でできました。「控えめに言ってかなりおいしい」というところも納得です。再現性が高いと言われる低温調理のもっとも効果的な活用法の一つではないかと思いました。ちなみにやり方としては、適当に(2-5%ぐらい?)塩漬けした後、比較的早いタイミングで塩抜きしたものと、数日おいてから塩抜きしたものの二通り。後者については時間があったので1日風乾しました。時間は双方とも15時間前後であったかと思います。仕上がりは、後者のほうがやや身が締まった感じがありましたが、双方とも納得の完成度でした。ただ双方とも微妙な酸味を感じました。直感的にSmoke Liquidに含まれている成分の問題ではないかと思いましたが、そもそもこの中に何が入っているのか表記されてませんね?その点すこし不気味な感じがします。
ベーコン作りは出来上がりまでに数日かかりますので、簡単にとは行きません。ただ、従来の燻製よりはずいぶん手間が無くなり、失敗はないのではないかと思います。
コメント、また、作っていただき誠にありがとうございます!
さて、酸味についてですが燻煙に含まれる殺菌、防腐成分として、カルボニル化合物、フェノール系化合物、有機酸があります。この有機酸に酸味が含まれており、これが食材移ることで酸味が出ると言われています。
スモークリキッドは燻煙を元に作られており、舐めてみると酸味があります。
煙は舐めてみることができませんが、従来の燻製器を使った燻製でも酸味は出るはずです。
ちなみに、本レシピで使用した「有限会社ロゴス」の「スモークリキッド」は原材料がリキッドスモーク(=ヒッコリーチップ燃焼煙、水)となっており、煙を水に溶かしたもののようです。その他に添加物は使用されていません。ですので、実際の煙とあまり相違はないのではないでしょうか。(製品によるとは思いますが。)
いつもありがとうございます。
また何かありましたらぜひお知らせいただけましたら幸いです。
大変勉強になります。現在、ベーコン低温調理に精を出しているものです。質問ですが、
塩を8%入れて、しばらくおき、その後塩抜きをする、というところですが、
ベーコンの場合には、必ず、塩抜きという操作が入りますが、これはどうしても必要なのでしょうか。
当方、YouTubeで、3日間でできるベーコンの作り方(板さん作)、を参考にさせていただいてますが、
それによると塩抜きの労作なしで、奥まで塩味が綺麗に入った、美味しいベーコンができました。
(ただし、自分的には燻製香が足りず、燻製シート、あるいは、燻製リキッド(こちらで拝見した)
の使用を検討している。)
今回作ったのにはマ○ーミックの ヒッコリースモーク(燻製風味)シーズニングを使用したのですが、
本当に深部まで美味しく塩味が入っていました。
あえて、多めの塩をして、再度塩を抜く、という作業がどうして必要なのか、ご教示いただければ、
と存じます。(保存食的な意味合いからでしょうか。)
ご質問ありがとうございます^^
「あえて、多めの塩をして、再度塩抜きする」という作業は本来は保存的な意味合いでしたが、本レシピでは「脱水させて旨味を凝縮させ、ベーコンの食感に近づけるため」という目的が一番になります。
以前に行なった実験に
70℃ 自家製ベーコン 塩漬け比較実験
https://boniq.jp/recipe/?post_type=recipe&p=14211
というのがありまして、塩分量2%と8%(どちらも塩抜きは必要です)、3日間と7日間、豚バラを塩漬けしたものを比較しましたところ、塩が2%でも8%でも3日しかつけていないものは仕上がりの身が柔らかく、ベーコンというよりは「塩豚」のように仕上がりました。
「塩8%で7日間」漬けたものが一番肉が引き締まり、いわゆるベーコンの食感になりました。
それで本レシピでは「塩8%で7日間」の塩漬けを行い、「塩抜き」するようにしています。
「板さんの料理塾」のベーコンは塩抜きが必要ないとのこと、低い塩分量で塩漬けされているのだと思いますが、おそらく本レシピのベーコンの食感より少し柔らかいのではないかと思うのです。
77℃,95℃ 脂質の吸収を抑制◎塩豚レンズ豆添え
https://boniq.jp/recipe/?post_type=recipe&p=14352
は塩豚のレシピですが、塩分量2%で2日間塩漬けし、塩抜きなしで仕上がります。内部までしっかり塩が入っていて、間違いなく美味しいのですが、こちらの食感に「板さんの料理塾」のものは近いのではないかと想像します。
77℃ 塩豚vs.調理後塩含ませ豚 比較実験
https://boniq.jp/recipe/?post_type=recipe&p=13896
の実験は、「塩豚」と「低温調理後に塩を含ませた豚ばら」を比較したものですが、当然「低温調理後に塩を含ませた豚ばら」の方が柔らかく、塩豚の方が脱水して引き締まっています。
つまり「低温調理後に塩を含ませた豚ばら」→「塩豚」≒「板さんのベーコン」→「BONIQのベーコン」の順に多く脱水して引き締まった食感になっていきます。
ご参考くださいませ。
ベーコンの低温調理、お気に入りができますように!
ご回答ありがとうございます。
やはり、食感の問題なんですね。塩を入れることで、やや通常のベーコンに近づく、というところで、
得心しました。
その食感が不要な場合には塩ぬきの労作は不要なのかもしれませんね。
ただ冷凍から冷蔵の保存だと、ある程度のベーコン硬度になるような印象ですので、素人料理だと
そこまで気を使わなくても良いような気もします。(低塩だと食中毒には十分注意が必要でしょうが。)
この間自分で作った板さんレシピでは特にお腹が痛くなったりはしませんでしたが、塩分を抑えることでの
リスクは今後とも注意をする必要があるのでしょうね。食材を扱うときに十分注意をして行きたいと思います。
ご教示誠にありがとうございます。
比較実験お目に留めていただき、また、ご質問いただきありがとうございました^^
おいしい低温調理ベーコンに辿り着きますように!
今後とも低温調理ライフをお楽しみくださいませ。