BONIQマニアにおくる、低温調理の疑問あれこれの検証。
日々低温調理をしていると、食材がこんなに美味しくなるのか!という感動がある一方、本当にこれで良いのか?もっとベストな方法があるのではないか?という疑問も同時にわいてくる。
最近では低温調理のメソッドに関する情報が増えつつあるが、それが本当に正しいのか?
実際調理をする中で出てきた疑問を検証してみる。今まであまり疑問を抱くことなく食材をバッグに入れて空気を抜いて密封し、低温調理を行ってきたが、実は「バッグの空気が上手く抜けない」という声が多いということが判明した。
中に空気が残っていると、バッグが湯せんの水面に浮いてきてしまい、食材がきちんと加熱されない。水面に浮いてこなかったとしても、熱が適切に伝わらず加熱ムラが生じることがある。
これでは例えレシピの設定温度と時間を守ったとしても、料理の仕上がりが理想と違ってしまうだけでなく、最悪の場合は食中毒を引き起こす可能性がある。
バッグが真空に近い状態であれば、調味料を入れる場合は少ない量で食材に浸透させることができる。また調理後も酸化したり食中毒菌のリスクを減らすことができる。真空パック器があれば高い精度でバッグ内を真空に出来る。しかし、ほぼ毎日低温調理を行っている筆者は使用していない。
その理由は
・専用の機械と専用バッグにコストがかかる。また、機械に場所と手間を取りたくないため。(現在は機械が小さくなり、市販のポリ袋を使えるものが出てきている。)
・肉を低温調理後、バッグの口をもう一度開閉する必要がある。なぜならば肉を調理する場合、(はじめから塩を入れず)肉を低温調理後にフリーザーバッグの口を開けて塩を入れる、“塩後含ませ法”を行うことが多いからである。始めから塩を入れて低温調理するより、その方が肉が柔らかくジューシーに仕上がるということが分かっている。(参照「鶏胸肉 低温調理 塩タイミング比較実験」)つまり、 機械で完全にシールしてしまうと、ハサミなどで開封してまた閉め直す手間がかかる。ジッパー付きのバッグであれば簡単に開け閉めできるのである。バルブ付きのフリーザーバッグで、小さなポンプで真空にできるタイプのものもある。これは水分のあるものに使えないので、湯せんに浸ける低温調理では水没してしまう。
以上のような理由から、真空パック器を使わずにフリーザーバッグの密封を行っている。
それではどの方法がベストなのか?一般的にバッグの中の空気を抜く方法としては、
・手で空気を抜く
・水圧で空気を抜く
・ストローを使って口で空気を吸い出すがあるが、今回はもう少し細かく分けて
①手:手で押し出すようにバッグの空気を抜く
②手:バッグごと食材をくるくると丸めるようにして空気を抜く
③水圧:バッグを水に浸けながら空気を抜く
④水圧:バッグを湯せん(湯)に浸けながら空気を抜く
⑤ストロー:バッグにストローを差し込んで、口で空気を吸い出すとする。
今回は重量と水気のある“鶏むね肉”、ごろごろと硬い“さつまいも”、空気を多く含む“房分けしたブロッコリー”の3種の食材を使い、①~⑤の方法にてバッグの密封を行う。
はたしてどの方法が簡単で効率良くバッグ内の空気を抜くことができるのか?材料
・鶏むね肉 各1枚(300g、厚さ2.5cm)
・さつまいも 各1本(350g)
・ブロッコリー(一口大に房分けしたもの) 各100g
《手順》
比較実験
鶏むね肉、さつまいも、ブロッコリーをフリーザーバッグに入れ、
①手:手で押し出すようにバッグの空気を抜く
②手:バッグごと食材をくるくると丸めるようにして押しながら空気を抜く
③水圧:バッグを水に浸けながら空気を抜く ※水の温度:24℃(水道水の温度)
④水圧:バッグを湯せん(湯)に浸けながら空気を抜く ※湯の温度:鶏むね 63℃、さつまいも 95℃、ブロッコリー 91℃(それぞれの食材を調理する時の温度)
⑤ストロー:バッグにストローを差し込んで、口で空気を吸い出す
比較実験結果
結果は・・・
「④湯せん(湯)に浸けながら空気を抜く」が一番万能!
たいていの食材に有効で、オペレーション的にもスムーズである。
ただし、注意点がある。
食材はバッグ内で重ならないようにして加熱する必要がある(レシピの設定時間は食材の厚さで決まっているため)。レバーや薄切り肉などバラバラの肉などバッグ内で重なりやすい食材の場合は、この方法で密封した後、層が重なっていないか確認する必要がある。もし重なってしまっているようなら、一度取り出してバッグをならし食材を広げると良い。
例外はブロッコリーなどの“カット野菜”。空気を含んでバッグが浮きやすいものは、この方法だけでは湯せんに沈めるのが難しい。しかも野菜の調理は90~95℃前後と湯せんが高温なので、密封作業でもたもたしているとかなり熱い。
そこで“カット野菜”の場合には、他の方法との併用が必要である。
「②手でバッグごと食材をくるくる押して空気を抜く」かもしくは「⑤ストローで空気を吸い出す」の方法であらかじめ空気を抜いてバッグを密封しておく。この時、食材同士がなるべく重ならないように広げておく。それから湯せんにバッグを投入する。(カット野菜は湯せんに入れると浮いてきてしまうのでバッグに重しを入れるか(現在BONIQ重し開発中)、ザルや耐熱性の瓶などでバッグを沈める必要がある。)そうしてバッグを沈めると上部に空気が溜まるので、④の方法でバッグの口の端を少し開けて上部の空気を抜いて密封すると、湯せん中に上手く沈めることができる。
以上のバッグ密封の仕方をマスターしておけば、たいていの食材がきちんと密封できる。
それでは他の方法の有効性はどうか?
「②手でバッグごと食材をくるくる押して空気を抜く」は、肉には有効であるが、肉に対してちょうど良い大きさのバッグを使った時にのみ上手く空気が抜ける。(鶏むね1枚にMサイズのバッグでは有効であるが、Lサイズを使うと空気が残ってしまう、など。)さつまいものように硬くゴロっとした食材の場合は空気が上手く抜けず、不向きである。
先述のように、カット野菜の場合に④と併用するのが良い。
次に「⑤ストローで空気を吸い出す」は、生肉の場合は生肉汁や肉臭を吸いこんでしまわないように空気を吸うのがとても難しく、その労力には合わない。ただし、さつまいもやブロッコリーなど液体がなく匂いが少ないものには有効である。特にカット野菜の場合は、一番密封度としては精度が高い。カット野菜の場合に④と併用するのが良い。ただし空気を一気に吸い出す肺活量が必要であり、複数枚ある場合は大変である。
「③水に浸けながら空気を抜く」は、水圧を利用する「④湯せん」と同じように思うが、なぜか③の方が空気が残ってしまう。③はNGというほどではないが、④の方が上手く空気が抜ける。ただし、カット野菜は浮いてきてしまうのでこの方法は使えない。肉やごろっとした硬い食材の場合で、低温調理をする前にあえて密封しておく必要がある場合など(大量に仕込む時など)には使える方法であるが、家庭で通常の低温調理を行う場合には、あえてこの方法を取る必要はないと思う。
「①手で空気を押し出す」は、鶏むね、さつまいも、ブロッコリーどの食材にしても上手く空気が抜けない。例えば、食材と一緒に調味液やオイルをじゅうぶんに入れれば、この方法でも可能である。しかし、液体が無いか少ない場合には成り立たない。
以上を総合すると・・・
カット野菜以外のたいていの食材で、「④湯せん」がオペレーションもスムーズで手間もかからず密封できる。
カット野菜の場合は、「②手でくるくる→④湯せん」もしくは「⑤ストロー→④湯せん」の2段階方式が一番スムーズである。
《作った感想》
肉などの重量のあるものは、バッグの空気を抜いて密封するのはそれほど難しくありませんでした。
しかし、カット野菜はなかなか沈まず湯せんが熱い!今まで苦戦していました。
今回改めて比較実験したことで一番ベストな密封の仕方が分かり、カット野菜が簡単に湯せんに沈められるようになったのは大きな収穫でした。
普通に塩ゆでした野菜と、BONIQで調理した野菜の味をぜひ比べてみてください。
野菜本来の旨みと甘さに驚かれると思います。
質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^
【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。
また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防
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- 低温調理のルール 〜6つのポイント〜 - 2020年6月3日
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