・BONIQ設定
・材料
・比較実験手順
・比較実験結果
・作った感想
・BONIQ管理栄養士による栄養アドバイス
BONIQで低温調理する時、塩を入れるタイミングで鶏むね肉の仕上がりに違いが出るのか?
それぞれ以下のように塩を入れるタイミング別に、全てBONIQ設定60℃ 2時間5分で鶏むね肉の調理を行った。
(1枚約300g、青森桜姫鶏の鶏むねを使用(88円/100g)。)鶏むね肉を・・・
①塩で下味し、BONIQ調理
②ブライニング後、BONIQ調理
※ブライニング:肉をジューシーに仕上げるために、5%程度の塩と砂糖を混ぜた溶液に漬ける技法。
③BONIQ調理後、食べる直前に塩をふる
④BONIQ調理後、フリーザーバッグに塩を入れて味を含ませる調理・冷却後は状態を落ち着かせるため、2時間置いてからスライスし、それぞれの違いを比較。
①②の方法が低温調理では一般的だが、果たして③④ではどのような結果になるのだろうか?
BONIQ設定
60℃
2:05(2時間5分)※参照:低温調理 加熱時間基準表(鶏肉)
材料
・鶏むね肉(皮と脂を落として1枚約300g、厚さ3cm)
・塩
・砂糖(④のブライニングのみで使用)当レシピの栄養素
栄養素(1人分) 1日の推奨摂取量 低糖質レベル ★★★(一食:糖質5g以下) カロリー 108 kcal - 糖質 0 g - タンパク質 22.3 g 体重 x 1.2g ~ 1.5 g 脂質 1.5 g - 食物繊維 0 g 20 g 以上 カリウム 350 mg 3500 mg 以上 カルシウム 4 mg 650 mg 以上 マグネシウム 27 mg 350 mg 以上 鉄分 0.2 mg 7.5 mg 以上 亜鉛 0.7 mg 10 mg 以上 ※100gあたりの栄養価を計算しています。
《手順》
① 塩で下味し、BONIQ調理
鶏むね肉と塩(2.5g)をフリーザーバッグに入れ、BONIQ(60℃ 2時間5分)で低温調理をする。
終了タイマーが鳴ったらフリーザーバッグを取り出し、冷却。
フリーザーバッグの密封方法:https://youtu.be/N-t1ox7mox0
鶏肉に塩味が均一入っていてしっとり美味しいが、やや繊維質も感じる。
② ブライニング後、BONIQ調理
鶏むね肉をブライン液(水400ml・塩20g・砂糖20gの溶液)に2時間漬けた後、フリーザーバッグに入れ、BONIQ(60℃ 2時間5分)で低温調理をする。
終了タイマーが鳴ったらフリーザーバッグを取り出し、冷却。
砂糖が入ったブライン溶液に漬けた分、後味に甘みを感じる。
しっとりジューシー。
③ BONIQ調理後、食べる直前に塩をふる
鶏むね肉をフリーザーバッグに入れ、BONIQ(60℃ 2時間5分)で低温調理をする。
終了タイマーが鳴ったらフリーザーバッグを取り出し、冷却。
食べる直前に鶏むね肉をスライスし、上から塩(2.5g)をふる。
見た目が色白できれい。かなりジューシー。
肉汁に塩分が入っていないので味にムラがあるが、口の中で塩と合わさると美味しくなる。
④ BONIQ調理後、フリーザーバッグに塩を加えて味を含ませる
鶏むね肉をフリーザーバッグに入れ、BONIQ(60℃ 2時間5分)で低温調理をする。
終了タイマーが鳴ったらフリーザーバッグを取り出し、塩(2.5g)をバッグに加え、冷却。
鶏肉に塩味が均一に入っている。
きめ細かい仕上がりで、最も柔らかく、ジューシーで美味しい。
これは大発見!その差異は小さいながらも、今までの定説を覆す結果が出た。
通常は①「塩で下味し、BONIQ」もしくは②「ブライニング後、BONIQ」のように、肉に下味やブライニングをして低温調理するのが定番だが、
④の「鶏むね肉をBONIQ後、フリーザーバッグに塩を加えて味を含ませる」が、一番柔らかくジューシーに感じられた。
間違えてはいけないのは①、②と共に③の「BONIQ後、食べる直前に塩をふる」の3つの方法とも、従来の鍋で茹でる調理法に比べ格段に柔らかくジューシーであり、ここではどれが大関でどれが横綱かというハイレベルの話である。それにしても④は究極の仕上がり。
もしかしたら鶏肉中の”水分含有量”の点では④より③の方が多いのかもしれない。しかし、④の方が歯切れが良く、噛んだ時にあふれ出る肉汁にちょうど良い塩分が均一に感じられるため、食べた感覚では④が最もジューシーで美味しく感じられた。
②のブライニングは、ここでは有効性がさほど感じられなかったが、冷凍鶏などを使用する場合や、皮つきで表面を焼く場合などには効果を発揮するかもしれないので、まだ研究の余地がある。
柔らかさ、ジューシーさ共に、
④>③>②>①
という結果になった。
念のため、BONIQ設定63℃でも同じ比較実験を行ったところ、今回の60℃よりも顕著に違いが出た。
《作った感想》
伝統的なフランス料理の工程において、肉に塩など下味をつけずに調理することが少ないのに対し、中国料理では塩を入れずに豚ばらを茹でる雲白肉(ウンパイロウ)などがあります。
この違いは何なのか、塩を入れるタイミングで食材の仕上がりがどのように違うのかというところから、今回実験を試みました。
④の「鶏むね肉をBONIQ調理後、フリーザーバッグに塩を加えて味を含ませる」が最も柔らかくジューシーに仕上がったのは、新たな低温調理のメソッドの発見でした。
知れば知るほど奥深い、低温調理の世界。
ぜひ、この結果が正しいかどうか実際に試してみてくださいね!
BONIQ管理栄養士による栄養アドバイス
鶏むね肉はたんぱく質の補給に最適な食材、というイメージが強いと思いますが他にも注目の栄養素があります。
それが、「イミダゾールジペプチド」またの名を「イミダペプチド」です。
アミノ酸が結合した物質をペプチドと呼び、そのぺプチドがより多く結合するとたんぱく質を形作ります。
イミダゾールペプチドは鶏の良く動く部位に豊富に含まれており、むね肉の中でも翼を動かす付け根の部分に多く含まれています。鳥は何キロメートルもの距離を羽を動かし空を飛ぶのですが、その持久力を維持するためにもこのイミダゾールペプチドが作用しています。
強い抗酸化作用を持ち、疲労回復に効果があると注目され、脳の老化も防ぐ働きがあることから日ごろから多く食べたい食材です。
しかし、従来の調理法だとむね肉は固くパサパサした食感になってしまいがちですよね。
せっかくいただくなら、低温調理を施し、ジューシーで柔らかい鶏むね肉を美味しくいただきたいですね。
<牛肉・豚肉・鶏肉の低温調理 塩のタイミング比較実験シリーズ>
58℃ ローストビーフ低温調理 塩投入比較
60℃ 鶏胸肉 低温調理 塩タイミング比較実験
63℃ 豚ヒレの低温調理 塩タイミング比較実験
77℃ 塩豚vs.調理後塩含ませ豚 比較実験
質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^
レシピ動画もご覧ください
【鶏むね肉の低温調理 塩タイミング比較実験】
※訂正「BONIQ設定」:概要欄内の【BONIQ設定】をご確認ください。
ASMR(NO MUSIC)
※訂正「BONIQ設定」:概要欄内の【BONIQ設定】をご確認ください。
【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。
また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防
最新記事 by 小野寺 桂子 (全て見る)
- 低温調理のルール 〜6つのポイント〜 - 2020年6月3日
この方法だと、菌は死滅しますか??また冷蔵保存であればどのくらいもちますか??
お問い合わせありがとうございます。
鶏肉のカンピロバクター 死滅温度は下記「東京都健康安全研究センター」の実験をご参照ください。
http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/health/07/07.pdf
保存に関しては、商品に同梱しておりますガイドブックで詳細条件を記載しておりますのでそちらを確認くださいませ。
よろしくお願いします。
鶏肉は常温の状態から調理するのでしょうか?
コメントありがとうございます。
常温に戻さないで調理していただいて問題ないと思います。
冷蔵肉を高温加熱する場合は、加熱ムラが発生するので常温に戻した方が良いですが
低温調理の場合は目標の芯温で全体加熱するため不要かと思います。
とても参考になりました!
細かいところですが、冒頭のナンバリング③④が逆のようなのでご確認くださいませ。
コメントありがとうございます!
ご参考いただけたとのこと、大変嬉しいです^^
また、ご指摘ありがとうございます!失礼いたしました、訂正させていただきました。
とても感動しました。貴重な実験データの公開をありがとうございます。素晴らしい。私Anova ユーザですが、Boniqや自作の低温調理機も応援してます。
1〜3は何度もやっていて余り変わらないので、手を抜いてます。でもブライニングした方がもっちり仕上がりますね。4の方法は試したことがありませんでした。素晴らしい。早速試してみます。胸肉は今まで61.8度でやってました。同じ条件で4をやってみます。
失礼、間違えました。61.8度でなく59.7度でした。
時間は肉の厚みで変えてます。
コメントありがとうございます!とても嬉しいです^^
ちょっとした違いですがその違いは大きく、せっかくならより美味しくいただきたいですよね!
他にも様々な「低温調理のギモン」を比較実験という形で検証しておりますので、ぜひご参考になってみてくださいませ。
https://boniq.jp/recipe/category/experiment/
鶏むねでの結果は牛もものローストビーフでも同じ結果が導き出されました・・!
4番をお試しになった結果もぜひ聞かせてください^^
とても参考になる比較実験をしていただきありがとうございました!
早速試してみたいのですが、加熱後の冷却については室温にて放置でよろしかったでしょうか?
お問い合わせありがとうございます!ご参考いただけて嬉しいです^^
「BONIQ後塩を含ませる」工程は、室温で問題ございません。なお、室温に置くのは最大でも1時間とし、それ以上は室温放置せずに芯まで急冷後冷蔵・冷凍保存をお願いいたします。
BONIQではほかにもたくさんの比較実験を行なっておりますので、ぜひ「比較実験」カテゴリよりご覧になってみてくださいませ^^
そもそもなのですが、塩はなぜ必要なのですか?
比較対象に塩なしがないのはなぜですか?塩なしだとどういう違いがあるのでしょうか。
お問い合わせありがとうございます!
塩を加えるということはただ単に塩分を加えるだけではなく、食材自体の旨味を引き出すという重要な意味があります。
そしてこの実験自体が塩を加えるタイミングによって肉質や味わいにどんな違いが出るか、を検証した記事であるので「塩なし」は想定しておりません。
ただ「③BONIQ してから食べる直前に塩を振る」と「④BONIQ してから塩を含ませる」の2つは塩なしで低温調理していますので、肉質に関して言えば「全く塩をしない場合」とほぼ同じになります。
もし塩分を気にされるなどの理由で塩をしなくても、肉自体はしっとりとジューシーに仕上がりますので全く問題ありません。