冷凍肉そのまま低温調理可能?比較実験

BONIQマニアにおくる、低温調理の疑問あれこれの検証。

日々低温調理をしていると、食材がこんなに美味しくなるのか!という感動がある一方、本当にこれで良いのか?もっとベストな方法があるのではないか?という疑問も同時にわいてくる。
最近では低温調理のメソッドに関する情報が増えつつあるが、それが本当に正しいのか?
実際調理をする中で出てきた疑問を検証してみる。

以前に行った、「65℃ 冷凍魚そのまま低温調理可能?比較実験」の第二弾、肉バージョン。
冷凍のままの食材をそのままBONIQしたらどうなるのか?

元々は、冷凍メカジキを流水解凍していてふと思いついたのであるが、流水解凍するくらいなら低温調理で“解凍”と“調理”が同時に行えるのではないか?と。
そこで冷凍メカジキを「冷蔵庫解凍」「室温解凍」「流水解凍」と「冷凍のまま」の4パターンに塩を加えてそれぞれを低温調理したところ、メカジキが一番ふっくら良い状態で仕上がったのは、解凍にゆっくり時間をかけた「冷蔵庫解凍」であった。(参照:「65℃ 冷凍魚そのまま低温調理可能?比較実験」)
ここで判明したのが、「冷凍のまま低温調理」は調理後に味を含ませる時間(厚さ1cmのメカジキで1時間)があれば「室温」「流水」とあまり変わらない仕上がりになるということであった。
つまり低温調理してから食べるまでに時間がある場合は、解凍の手間が省ける「冷凍のまま低温調理」が便利であるということが分かったのである。

それでは肉の場合はどうか?

魚と肉で反対の結果が出ることもあり得る。
例えば、“塩を入れるタイミング”で仕上がりの身質がどう変わるかを比較した実験では、“牛もも”と“サーモン”で反対の結果が出た。牛では低温調理後に塩を含ませた方がジューシーで柔らかい肉質になるのに対し、サーモンでは振り塩(調理前に塩を振って少し置いておく工程)をした方が、後から塩を入れたものよりもジューシーで臭みがないということになった。(参照:「57℃ ローストビーフ低温調理 塩投入比較」、「50℃ ブライニングは有効?比較実験 サーモン編」)
なぜそうなるのかはまだ解明できていないが、いずれにしてもこのように肉と魚で結果が違ってくることがあり得るので、今回の「冷凍肉をそのまま低温調理」もやってみないと分からない。

そこで、
“鶏むね”を
実験① 冷蔵庫で解凍
実験② 流水で解凍
実験③ 冷凍のまま
BONIQ(60℃ 1時間50分)→ 塩を含ませる

“牛ヒレ”を
実験④ 冷蔵庫で解凍
実験⑤ 流水で解凍
実験⑥ 冷凍のまま
BONIQ(57℃ 3時間)→ 塩を含ませる

でそれぞれ実験を行い、仕上がりを比較してみる。
※以前のメカジキの時は「室温解凍」も実験したが、室温に放置するのは衛生面に問題があり、さほどメリットがないので省くこととする。

※BONIQ後に塩を含ませるのは、先述の通り、低温調理後にフリーザーバッグに塩を入れて肉に含ませた方が、最初から塩で下味をするよりも柔らかくジューシーに仕上がる、という実験結果によるものである。

※冷凍および解凍は家庭用冷凍庫・冷蔵庫で行う。

BONIQ設定

実験①~③ 60℃ 1:50(1時間50分)
実験④~⑥ 57℃ 3:00(3時間)

→参照:低温調理 加熱時間基準表

材料


<実験①~③>
・鶏むね肉  各1枚(下処理後、厚さ2.5㎝/ 250g)
・塩  各2.3g(肉の重量の0.9%)

<実験④~⑥>
・オーストラリア産牛ヒレ肉  各1枚(下処理後、厚さ2.5㎝/ 100g)
・塩  各0.9g(肉の重量の0.9%)

《手順》

比較実験①〜③

同じ大きさ、厚さに整えた鶏むね肉をフリーザーバッグに入れ、冷凍庫で完全に冷凍する。

実験① 冷蔵庫で解凍
実験② 流水で解凍
実験③ 冷凍のまま

BONIQ(60℃ 1時間50分)し、終了のタイマーが鳴ったらバッグを取り出して塩を投入する。バッグごと氷水につけて急冷する。※実験③は冷凍のままは60℃の湯せんに投入し、解凍できた時点(触って柔らかくなったのを確認)から1時間50分である。

2時間後、再び60℃の湯せんにつけて温め、比較を行う。

比較実験④〜⑥

同じ大きさ、厚さに整えた牛ヒレ肉をフリーザーバッグに入れ、冷凍庫で完全に冷凍する。

実験④ 冷蔵庫で解凍
実験⑤ 流水で解凍
実験⑥ 冷凍のまま

BONIQ(57℃ 3時間)し、終了のタイマーが鳴ったらバッグを取り出して塩を投入する。バッグごと氷水につけて急冷する。※実験⑥は冷凍のまま57℃の湯せんに投入し、解凍できた時点(触って柔らかくなったのを確認)から3時間である。

2時間後、再び57℃の湯せんにつけて温め、比較を行う。

比較実験結果

その結果は・・・

鶏むねについて
実験① 冷蔵庫解凍は約9時間
実験② 流水解凍は約20分
実験③ 冷凍のままBONIQでは、60℃の湯せんに投入して8分
で解凍した。

BONIQ後のドリップの量を比較すると
①16g ②22g ③22g と、①の冷蔵庫解凍が一番少ないものの、その差はわずかである。

食べてみると、①②③の違いがほとんど分からない。どれも柔らかくジューシーで間違いのない仕上がりである。
しかし、若干①が柔らかく③が一番噛み応えがあるような気もする。しかしこれはあくまで比較してこちらから違いを探しに行っているからで、比較実食しなければわからないレベルである。あまりにも分からないのでもう一度同じ実験をしてみたが、今度は②が若干柔らかい気がした。
つまり、これは解凍の仕方の違いが影響しているのではなく、鶏むね肉自体の固体差ではないだろうか。ただ2回とも③が一番柔らかいということはなかった。

次に牛ヒレ肉について
実験④ 冷蔵庫解凍は約8時間
実験⑤ 流水解凍は約15分
実験⑥ 冷凍のままBONIQでは、57℃の湯せんに投入して8分
で解凍した。

BONIQ後のドリップの量を比較すると
④15g ⑤16g ⑥19g と、①の冷蔵庫解凍が一番少ないものの、その差はわずかである。

こちらも食べてみると、どれも柔らかくジューシー。
とても僅差であるが、やや①が一番柔らかく③がやや噛み応えがあり、②はその間というような気がした。

鶏むね肉と牛ヒレ肉では、「65℃ 冷凍魚そのまま低温調理可能?比較実験」のメカジキのように明確な差が出なかった。
一つ注意したいのは、今回は②⑤の流水解凍では肉が解凍された時点ですぐに引き上げてBONIQしている。もし肉が解凍されているにも関わらず、そのまま流水(水温22℃)にさらしっぱなしにした場合、もっとドリップが流出して肉が硬くなる可能性も無いとは言えない。

今回の結果をまとめると、

鶏むね肉では
仕上がりのクオリティ ①冷蔵庫解凍≒②流水解凍>③冷凍のまま
スピード ③>②>①

牛ヒレ肉では
仕上がりのクオリティ ④冷蔵庫解凍>⑤流水解凍>⑥冷凍のまま
スピード ⑥>⑤>④

冷凍肉はそのまま低温調理可能か?→可能である!
家庭で楽しむ分にはどの解凍の仕方でも全く問題ではない。
急いでいる時はスピードを重視して、冷凍のままBONIQにかけても良いと思う。それよりは肉自体の鮮度やクオリティ、添えるソースなどを気にした方が良いのではないだろうか。
あくまで最上級のクオリティを追求するのであれば、もちろん時間はかかるが①の冷蔵庫解凍をするのが間違いないと言える。

《作った感想》
今回はのように明らかな差が出ず、歯切れの悪い言いまわしが多いですが。。。
あくまで比較実験で食べ比べた結果であり、間違いなくどれもクオリティは高いと言えるので、臨機応変に解凍の仕方を選んでも良いと思います。

質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^

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【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照下さいませ。


また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防

 

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小野寺 桂子

小野寺 桂子

大学卒業後にフレンチを学びにル・コルドン・ブルー・ロンドンへ留学。 その後、La Maison Courtineパリにて料理人をした後、フレンチの鉄人坂井氏がプロデュースの大阪の名門フレンチ ラ・ロシェルにて従事。食育インストラクター・日本ソムリエ協会公認ソムリエ。お酒にマッチするBONIQレシピを提案させていただきます。

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