BONIQマニアにおくる、低温調理の疑問あれこれの検証。
日々低温調理をしていると、食材がこんなに美味しくなるのか!という感動がある一方、本当にこれで良いのか?もっとベストな方法があるのではないか?という疑問も同時にわいてくる。
最近では低温調理のメソッドに関する情報が増えつつあるが、それが本当に正しいのか?
実際調理をする中で出てきた疑問を検証してみる。“ミートローフ”は従来、ミンチ肉のタネをパウンド型に入れてオーブンで焼き上げる料理であるが、それを低温調理で出来ないか、と考えた。パウンド型を湯せんで低温調理して、果たしてミートローフが出来るのか?
パウンド型に入れたミンチ肉が、どのように温度が上昇するのかをモニタリングし、料理の安全性を検証する。今回は牛と豚の“合いびき肉”を使用するので、牛肉より長い加熱時間を必要とする“豚肉の加熱安全基準”をクリアしなくてはならない。
豚肉の安全基準は、厚生労働省の定める基準「63℃ 30分、または、これと同等以上の方法」(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/jigyousya/shokuhin_kikaku/dl/09.pdf)である。ここで間違えてはならないのが、この基準は「肉の中心がこの温度を保つべき時間」であって、「調理時間」ではない。
そして、この厚生労働省の基準を「調理時間(BONIQ設定時間)」に置き換えて算出したものが、当サイトで公開している「低温調理 加熱時間基準表」である。条件は以下の通り
・合い挽き肉を使用
・【16×7×5.5cm】サイズのアルミ製パウンド型を使用
・BONIQ設定 64℃
で行い、実験①:湯せん中にココットを逆さまに沈めた台にして水位を調整し、その上にパウンド型を置いて低温調理する。湯せんはパウンド型が水没しないギリギリの水位を保つ。
実験②:パウンド型ごとフリーザーバッグに入れ空気を抜いて密封し、湯せん中に完全に沈めて低温調理を行う。
以上の条件にて芯温計を刺し、どのように芯温度が上昇するのかを検証した。
BONIQ設定
64℃
材料
☆16×7×5.5cmのパウンド型1台分☆
※パウンド型はアルミ製を使用。
・合い挽き肉 400g
・サラダ油 大さじ1
・玉ねぎ(小) 1/2個(約100g)
・卵 1個
・乾燥パン粉 1/4カップ
・牛乳 大さじ3
・ケチャップ 大さじ2
・塩 適量
・こしょう 適量当レシピの栄養素
栄養素(1人分) 1日の推奨摂取量 低糖質レベル ★★☆(一食:糖質20g以下) カロリー 318.6 kcal - 糖質 7.8 g - タンパク質 22.2 g 体重 x 1.2g ~ 1.5 g 脂質 20.5 g - 食物繊維 0.7 g 20 g 以上 カリウム 431 mg 3500 mg 以上 カルシウム 35 mg 650 mg 以上 マグネシウム 28 mg 350 mg 以上 鉄分 2.2 mg 7.5 mg 以上 亜鉛 3.8 mg 10 mg 以上 ※上記はレシピ1/4分の栄養価を計算しています。
《手順》
玉ねぎはサラダ油で透明になるまで炒め、あら熱を取っておく。パン粉は牛乳に浸しておく。
全ての材料をボウルに入れ、粘り気が出るまでよくこねる。
パウンド型(アルミ製)にラップを敷き、ミンチ肉を詰める。
パウンド型を上から数回落として空気を抜く。冷蔵庫に入れて1時間休ませる。
ココットなどの台を置いて高さを調整した湯せんにパウンド型を入れ、BONIQ 64℃で低温調理を行う。
湯せんの水位はパウンド型が水没しないギリギリまで湯を張って行う。(湯が減って水位が下がらないように時々足す。)
芯温計を刺して、どのように温度が上昇するかを検証する。
パウンド型にタネを入れて冷蔵庫で休ませるまでの工程は、実験①と同じ。
パウンド型ごとフリーザーバッグに入れ空気を抜いて密封し、湯せん中に完全に沈めBONIQ 64℃で低温調理を行う。
芯温計を刺して、どのように温度が上昇するかを検証する。
結果は・・・
「①湯せんの高さを台で調整し、その上にパウンド型を置いて低温調理」の場合、温度上昇が緩やかであり、調理開始から4時間10分後に58.4℃に達したが、5時間の時点でも58.4℃のままであった。
もしかするとこのまま調理を続ければ少しは温度が上がったのかもしれない。しかし、この58.4℃というのはパウンド型の中心付近を計測したものであり、一番表面の温度は約54℃とさらに低かった。おそらくこれ以上調理を続けても安全レベルには達しないと判断し、5時間で終了した。
表面ギリギリまで湯せんを張っているとはいえ、湯せんからパウンド型の上部が出ている状態だと、上部からの加熱がされないため表面の温度が上がらないのではないか。
ちなみに豚肉の安全加熱基準に当てはめると58℃では5時間、54℃では31時間33分以上芯温を保つ必要がある。(“調理時間”となるとさらに4~5時間プラスされる。)
これではミートローフの調理時間としては非現実的である。
「②パウンド型ごとフリーザーバッグに入れ空気を抜いて密封し、湯せん中に完全に沈め低温調理」では、順調に温度が上昇し、調理開始から2時間20分後に芯温が64.0℃まで到達した。
豚肉の安全基準を達成するには、64.0℃を22分30秒保つ必要があるので、
2時間20分+22分30秒=2時間42分30秒
で安全レベルに達することが出来るということになり、これが調理時間=BONIQ設定時間となる。(※レシピに記載している設定時間は通常、安全基準の時間きっかりではなく少しのバッファを加えている。)
例えば「85℃ 茶碗蒸し」や「85℃ とろける♪かぼちゃのなめらかプリン」のように型が小さく、素材も生食できる卵などの場合は、周囲からの熱で表面を含む全体が加熱されるので、調理中に型上部が水面上に出た実験①の方法でも特に問題にはならなかった。
しかし加熱殺菌が必要である肉などを使用する場合、または型が大きく加熱すべき範囲が広い場合は、湯せん中に完全に食材を沈め、全方向からの加熱を行う必要があるということがわかった。
《作った感想》
この実験の結果、湯せん中に完全に型を沈めれば安全にミートローフを作ることができることがわかりました。
オーブンで作ったものとは違う、とてもソフトで新しい食感です。
一方、ドリップがたくさん出る点をどうするか?また、香ばしさが足りない点をどうするか?などクリアしなければならない問題もあります。
より美味しいミートローフの完成を目指して、さらに研究を進めたいと思います。
BONIQ管理栄養士による栄養アドバイス
今回は試験的にミートローフの温度上昇をモニタリングするためのレシピだったため、ハンバーグの種をそのままパウンド型に入れて加熱しましたが、ミートローフは中心にゆで卵を入れたり、ゆでたニンジンやインゲン豆などを入れたりしてアレンジすることができます。
糖質が気になる場合、パン粉の代わりにおからを入れてつなぎの代わりにすることができます。
また、お肉の脂質が気になる場合は半量を少し水切りをした木綿豆腐に変えると、あっさりとした食べやすいミートローフを作ることができます。
お肉だけではなく、卵や野菜も一緒に食べられ、少し豪華に見えることがミートローフのいいところ。
栄養価や色合い、味も自分好みのレシピに変えていけることが手作りの利点ですね。
質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^
【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。
また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防
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- 低温調理のルール 〜6つのポイント〜 - 2020年6月3日
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