比較実験

頭ワタ付きさんま煮は臭くなる?比較実験

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BONIQマニアにおくる、低温調理の疑問あれこれの検証。
日々低温調理をしていると、食材がこんなに美味しくなるのか!という感動がある一方、本当にこれで良いのか?もっとベストな方法があるのではないか?という疑問も同時にわいてくる。
最近では低温調理のメソッドに関する情報が増えつつあるが、それが本当に正しいのか?
実際調理をする中で出てきた疑問を検証してみる。

脂の乗った旬のさんまは塩焼きにしても煮つけにしても美味しいが、その中でもワタをつけたまま煮た「しょうが煮」や「山椒煮」などはワタから出る旨みが深い味わいで格別に美味しく、お酒もすすむ逸品である。
そこで、ワタと頭をつけたまま低温調理で骨まで柔らかく丸ごと食べられるようにできないだろうか?

低温調理というのは誰でも食材の加熱を完璧にコントロールし食感や味を理想の状態に仕上げることができたり、少ない調味料を適切なタイミングで味を浸透させたり、ほったらかしで調理できたりと、従来の調理法では出来ないさまざまメリットがある。
しかし弱点もある。フリーザーバッグ内で調理すると、素材の良い香りを逃さない反面、良くない香りも閉じ込め増幅させる可能性がある。そして調理途中のアク取りが出来ない。

以前に行った実験やレシピなどで、イワシを「70℃ 30分」という低温かつ短時間で低温調理を行ったものはほとんど臭みは感じられなかった。(参照:「ふわとろ いわしの梅煮」)また、「95℃ 7時間」の高温かつ長時間の「骨まで食べられる!さんまのコンフィ」でも臭みが出ることなく骨まで美味しく食べられた。これらは両方、頭やワタを取った状態で低温調理を行ったものである。

それではワタや頭をつけたままで低温調理ができるのか?骨まで食べられる状態にする高温・長時間調理でも臭みが出ないのかを検証してみる。

さんまの
実験① “頭・ワタなし” を「BONIQ 70℃ 30分」
実験② “頭・ワタあり” を「BONIQ 70℃ 30分」
実験③ “頭・ワタなし” を「BONIQ 95℃ 7時間」
実験④ “頭・ワタあり” を「BONIQ 95℃ 7時間」

でどのように仕上がるのかを比較する。

BONIQ設定

実験①② 70℃ 30分
実験③④ 95℃ 7時間 

材料


<実験①〜④>
・さんま  各1本
・塩 (振り塩用)  適量
・しょうゆ  大さじ2
・みりん(煮切り)  大さじ2
・酒(煮切り)  大さじ2
※臭みがどう出るのかを調べるため、あえてショウガなどは入れずに行う。

《手順》

比較実験

振り塩をし、冷蔵庫で30分おく。

実験①③ → さんまの頭を落とし、内臓を取る。血合いを流水でよく洗う。
実験②④ → そのまま流水で洗う。

ペーパーで水気を拭く。

実験①③は3等分、実験②④は4等分に筒切りにする。(実験①③は元々頭を落としているので、等分の仕方が違う。)

実験① “頭・ワタなし” を「BONIQ 70℃ 30分」 
実験② “頭・ワタあり” を「BONIQ 70℃ 30分」
実験③ “頭・ワタなし” を「BONIQ 95℃ 7時間」
実験④ “頭・ワタあり” を「BONIQ 95℃ 7時間」

その後室温まで冷まし、比較試食を行う。

比較実験結果

上記の画像からわかるように、まず煮汁の色や見た目でも大きな差が出た。
実験①②のBONIQ「70℃ 30分」はさんまに照りがなく煮汁ににごりがあるが、実験③④の「95℃ 7時間」の方が色鮮やかで煮汁が色濃くなっているがクリアである。まるで甘露煮のように照りがあってつやつやしている。低温調理ではバッグ内で調理すると煮汁を煮詰めることが出来ないが、③④はまるで煮詰めたかのように照りが出ているのは驚きである。

次に試食してみると・・・

まず最初に記しておきたい。
実験④「“頭・ワタあり” 95℃ 7時間」の圧倒的勝利!!美味しい。骨まで美味しい。コクがあり旨みたっぷりで深い味わい。そして身まで味が浸透している。
実験③「“頭・ワタなし” 95℃ 7時間」と比較すると、どちらも骨までじゅうぶんに柔らかくなっているのは同じであるが、旨みの出方が明らかに違う。
④の頭を丸ごと食べてみると、旨みが詰まっているのがよくわかる。煮汁も旨みが出ていてまろやかでコクがある。③はやや煮汁の味に鋭さがあるが、美味しいのには違いない。一般的な「サンマ煮つけの缶詰」のイメージに近いかもしれない。

そして最もNGなのは・・・
実験②「“頭・ワタあり” 70℃ 30分」。びっくりするほど苦い!臭い!残念ながらこれは料理としてナシ。
生臭さがあり、苦味が味全体を支配している。実験④は頭とワタからたっぷりと旨みが出ていたのに、②ではただ苦く生臭くなる。全く同じ素材なのに温度と時間が違うだけで、雲泥の差に仕上がるのは驚きである。

実験①「“頭・ワタなし” 70℃ 30分」はやや生臭さがあるが、ショウガや山椒などの臭み消しを入れれば気にならない程度だと思う。悪くはないが、実験④の骨まで食べられて旨みたっぷりのものと比較すれば、骨が食べられずいちいち小骨を取らないといけないのはとてもストレスであり、やや旨みの面で物足りない。温かい状態で食べればもっと身離れがよく美味しいのかもしれない。

まとめると、
臭みのなさ 実験③④>①>②
旨み ④>③>①>② 
  
総合的な美味しさ ④>③>①>② ※②は料理としてナシ。
 
さんまの低温調理は「70℃ 30分」よりも「95℃ 7時間」が臭みもなく旨みがしっかり出て頭や骨も食べられ、この場合は「頭・ワタなし」よりも「頭・ワタあり」が旨みが出て断然美味しいという結果になった。(70℃の場合は逆なのは上記の通り。)  

《作った感想》
実験前の予想では、アク取りが出来ないバッグ内の低温調理では調理時間が長く、「頭・ワタ付き」の方が臭みが閉じ込められてしまうのでは?と考えていましたが、結果は全く逆!
「70℃ 30分」よりも「95℃ 7時間」は臭みもなく、「頭・ワタなし」よりも「頭・ワタあり」が旨みが出て断然美味しいという結果になったのは驚きでした。また、低温調理ではバッグ内で調理するので煮汁を煮詰めることが出来ないのに、「95℃ 7時間」はまるで煮詰めたかのように照りが出ていたのも驚きでした。
同じ素材で同じ調味料を使ったのに、調理温度と時間で仕上がりがこうもはっきり違うという点も新たな発見でした。
これだから低温調理は面白い!
今回は「さんまの煮つけ」というやや“地味な”実験ではありますが、驚きの連続でした。そして今、こういうものが低温調理の可能性をさらに広げると確信しています。

<さんまの低温調理 比較実験シリーズ>
頭ワタ付きさんま煮は臭くなる?比較実験
95℃ 骨まで柔らかくなる?さんま 比較実験

質問・疑問・要望・作った感想をコメントいただけたら嬉しいです^^

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【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。


また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防

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小野寺 桂子
大学卒業後にフレンチを学びにル・コルドン・ブルー・ロンドンへ留学。 その後、La Maison Courtineパリにて料理人をした後、フレンチの鉄人坂井氏がプロデュースの大阪の名門フレンチ ラ・ロシェルにて従事。食育インストラクター・アスリートフードマイスター3級・日本ソムリエ協会公認ソムリエ。お酒にマッチするBONIQレシピを提案させていただきます。
小野寺 桂子

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  • ・さんま  各1本
  • ・塩 (振り塩用)  適量
  • ・しょうゆ  大さじ2
  • ・みりん(煮切り)  大さじ2
  • ・酒(煮切り)  大さじ2
  • ※臭みがどう出るのかを調べるため、あえてショウガなどは入れずに行う。

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