牛肉レシピ

ホールディングは有効?比較実験~牛ももVo.3~

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BONIQマニアにおくる、低温調理の疑問あれこれの検証。
日々低温調理をしていると、食材がこんなに美味しくなるのか!という感動がある一方、本当にこれで良いのか?もっとベストな方法があるのではないか?という疑問も同時にわいてくる。
最近では低温調理のメソッドに関する情報が増えつつあるが、それが本当に正しいのか?
実際調理をする中で出てきた疑問を検証してみる。

ホールディングの効果を検証する実験、第3弾。

「ホールディング」とは「調理した塊肉を、それ以上調理が進まないような温度で“保温”しておくこと」だが、例えばレストランなどでオーダーが入れば温かい状態ですぐサーブできるように、ローストビーフなどに使われる手法である。
ところがこの「ホールディング」には「保温」だけでなく、なんと「肉を柔らかくし、旨みをアップさせる」すなわち「肉の熟成」の効果があるとも言われている。「肉の熟成」とは「温度や湿度を完璧にコントロールし、肉を腐敗させずに微生物の働きよって旨みを引き出し肉を柔らかくすること」であるがこれには数十日もかかるという。

このホールディングの効果の程を検証した実験「ホールディングは有効?比較実験 ~牛ももVo.2~」では「6時間10分(※厚さ4cm牛肉の55℃最短調理時間)」よりも「12時間」、さらに「24時間」で旨みがアップし、肉の歯切れがよくなって柔らかくなることが確認された。(57℃の場合は24時間の低温調理では、旨みは増すがパサついてしまうことを確認している。参照:「ホールディングは有効?比較実験 ~牛もも編〜」)

それならば、24時間以上だとどうなるのか?
長く低温調理すればするほどもっと美味しくなるのであれば、低温調理の新たなメソッドの大発見である!
どんどん旨みがアップし、柔らかくなるのか?はたまた、ドリップが流出し過ぎてパサパサになるのか?

そこでオーストラリア産牛もも(厚さ4cm)を使い、
実験①BONIQ(55℃ 24時間)→バッグに塩を入れて肉に含ませる    
実験②BONIQ(55℃ 36時間)→バッグに塩を入れて肉に含ませる  
実験③BONIQ(55℃ 48時間)→バッグに塩を入れて肉に含ませる 

この時、塩を入れるタイミングは低温調理後にバッグに塩を入れて肉に含ませることとする。(「58℃ ローストビーフ低温調理 塩投入比較」参照:「低温調理後、塩をバッグに入れて含ませる」が一番歯切れがよく、ジューシーであるという結果になった。)

BONIQ設定

55℃
実験①24時間 
実験②36時間
実験③48時間 

材料


<実験①~③>
・牛もも肉(オーストラリア産)  各1本(厚さ4cm/ 180g)
・塩  各1.6g(肉の重量の約0.9%)

《手順》

比較実験

すべて同じ大きさ、厚さに整えた牛もも肉を

実験①BONIQ(55℃ 24時間)     
実験②BONIQ(55℃ 36時間) 
実験③BONIQ(55℃ 48時間) 

BONIQの終了タイマーが鳴ったらそれぞれバッグを開けて塩を入れ、肉に含ませ冷却する。(1時間)
その後比較試食を行う。

比較実験結果



まずドリップの量を比べてみると、

実験①BONIQ 24時間:27g
実験②BONIQ 36時間:29g
実験③BONIQ 48時間:39g

時間が長くなるにつれドリップ流出量は増えている。

次に試食すると、
実験①:旨みがしっかりしており、柔らかく歯切れが良い。
実験②:①よりさらに旨みがアップしている。見た目にはジューシーさがないが、パサつきはしない。かなり柔らかく歯切れが良い。
実験③:①②よりまださらに旨みがアップしている。肉の繊維がほぐれ、スライスすると崩れかける。パサつきはない。一番歯切れが良い。

以前の実験の結果より、「①24時間」は最短で調理した時(厚さ4㎝牛肉で55℃ 6時間10分)よりも旨みがアップし柔らかくなっていることは予想通り。
「②36時間」さらに「③48時間」と、①よりももっと旨みが強くなっており、それらは舌の横が痛いくらいである。塩だけでこれほどの旨みが引き出されることは驚きである。
だが③はスライスする時にやや身が崩れる。肉の繊維がほぐれだしている。

まとめると
柔らかさ ③48時間 > ②36時間 > ①24時間
しっとりさ ① ≒ ② > ③ 
旨み ③ > ② > ①

総合的な美味しさ ② > ①③   

①~③はどれも“赤みが強く肉汁したたるようなローストビーフ”とは別ものであるが、肉そのものの旨みとしては格段にアップしている。多く出るドリップにも旨みがしっかりあるので、そのまま食べるのではなく、ソースとして皿の上に戻してやるべきだと思う。
そして、「これはローストビーフ」と言える最長は「②36時間」あたりではないだろうか。「③48時間」はもはやローストビーフではなく、パテとかコンビーフの一歩手前のような、何か別ものである。これはこれで何か別の料理ができそうだ。

《作った感想》
今回の実験では「②36時間」で舌の横が痛いくらいの旨みが引き出され、パサつきもせず、ものすごく柔らかく歯切れよく仕上がりました。“赤い肉汁したたるローストビーフ”とは別ものなので好みは分かれるかもしれませんが、「②36時間」で、肉の旨みを極限まで引き出すという、低温調理の新たな可能性を感じました。
また、噛み応えのあるローストビーフをサンドイッチなどにすると、食べる時に具がでろーんと出てきて困りますが、これはものすごく歯切れが良いのでとても食べやすく、子供でも上手に食べられると思います。
さて、鶏や豚など他の肉のホールディングではどうなるのか?
さらなる低温調理の可能性を探るべく、次の実験に取り組みたいと思います。

<ホールディングは有効か?牛もも編 比較実験シリーズ>
ホールディングは有効?比較実験 ~牛もも編~
ホールディングは有効?比較実験~牛ももVo.2~
ホールディングは有効?比較実験~牛ももVo.3~

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【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。


また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防

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小野寺 桂子
大学卒業後にフレンチを学びにル・コルドン・ブルー・ロンドンへ留学。 その後、La Maison Courtineパリにて料理人をした後、フレンチの鉄人坂井氏がプロデュースの大阪の名門フレンチ ラ・ロシェルにて従事。食育インストラクター・アスリートフードマイスター3級・日本ソムリエ協会公認ソムリエ。お酒にマッチするBONIQレシピを提案させていただきます。
小野寺 桂子

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コメント

    • 河合大介
    • 2023.12.05

    やってみました、ホールディング。
    ほんとは36時間、せめて24時間やってみたかったのですが、家族の催促に勝てず18時間で取り出し。無念。
    それでも3cm厚の肉がさっくり噛み切れるおどろきのやわらかさでした。
    600gでは到底足らないほどの圧倒的売れ行きで満足です。
    ドリップもおすすめ通りソースに仕立てて、これだけご飯にかけてもおいしい!と一滴残らずたべきり。
    つぎはぜひ36時間を達成したいと思います。

    • BONIQ

      コメントありがとうございます^^
      ホールディング、お試しいただけまして幸いです。ご家族のみなさまにもお気に入りいただけましたようで、大変嬉しいです!
      今後ともBONIQで低温調理を存分にお楽しみくださいませ。
      また、ぜひ36時間達成されましたらご感想をお待ちしております!

    • wisdomkeepers
    • 2025.07.16

    質問
    ①低温調理して、出て来る「ドリップ」はなんだか血の様に見えるのですが、これをソースに利用することは出来るのでしょうか?
    ②1kgのランプ肉塊でやっているのですが(どうせなら皆で食べたい)、後から塩で浸透するものですか?
     ※ 試してみたところ程ほど塩みがあるのですが、やはり厚いとなんか先にまずはブライニングして、その後、あらためてボニーク後の塩の投入とか?

    • BONIQ

      お問い合わせありがとうございます。
      1のドリップに関して、以下ページにて詳しく解説しております。
      ぜひご参考くださいませ。

      【解説】調理前&調理後のドリップについて
      https://boniq.jp/recipe/aboutmeatdrip/

      2の大きな塊肉での後塩に関して、ブライニングはオーブンで焼く場合など肉汁を失う場合はその補充となるため有効ですが、低温調理の場合は元々肉が水分を失いにくいので水っぽくなってしまう可能性があります。(逆に脱水した方が味が凝縮するという結果もあります。ご参考例:「58℃ 脱水は有効?低温調理比較実験 牛もも編」 https://boniq.jp/recipe/?post_type=recipe&p=27024

      ですので、大きな塊肉の場合は「袋に後から塩を入れる」に加え、スライスしてから断面に塩と粗挽きこしょうを添えるのが良いのではないでしょうか。
      その際の塩は粒の大きい海塩(フルール・ド・セル)や岩塩なら料理がワンランクアップします。

      ご参考例:「57℃ 鴨むね肉 カシスソースと共に」
      https://boniq.jp/recipe/?post_type=recipe&p=2995

      ご参考いただけましたら幸いです。
      塊肉の完璧な火入れは低温調理ならではですね!^^
      引き続き低温調理ライフを存分にお楽しみいただけますように。

BONIQ設定

  • 55℃
  • 実験① 24時間 
  • 実験② 36時間
  • 実験③ 48時間 

材料一覧

  • <実験①~③>
  • ・牛もも肉(オーストラリア産)  各1本(厚さ4cm/ 180g)
  • ・塩  各1.6g(肉の重量の約0.9%)

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