・BONIQ設定
・材料
・一食あたりの栄養素
・比較実験
・比較実験結果
・作る際のポイント
・作った感想
・BONIQ管理栄養士による栄養アドバイス
加熱による、肉の脱水。
高温調理と比較して、たんぱく質を破壊しない低温度帯で加熱をする低温調理はもともと「脱水(食材の水分流出)」が少ない調理法である。
しかし、やはりBONIQ後のフリーザーバッグには肉から出た汁が残る。この汁にこそ、肉のジューシーさや旨みが詰まっている。そこで、あらかじめ食材の余分な水分を抜いてから低温調理をすることによって、一層旨みを閉じ込めることはできるのか?脱水の有無、また脱水時間によって、その仕上がりに違いはあるのか?
前回「58℃ 脱水は有効?低温調理比較実験 牛もも編」で食品用脱水シートを使い、以下の3パターンでそれぞれの仕上がりの違いを比べてみた。
牛もも ブロック肉を、
①BONIQ→バッグに塩を入れて肉に含ませる→焼き色をつける
②脱水12時間→BONIQ→バッグに塩を入れて肉に含ませる→焼き色をつける
③脱水24時間→BONIQ→バッグに塩を入れて肉に含ませる→焼き色をつけるその結果、「総合的なおいしさ:②≒③>①」となり「牛もも肉は脱水した方がおいしくなる」という結果になった。
部位や大きさを変えても、同様に「脱水した方がおいしくなる」結果となるのか?
そこで今回は「部位=牛タン」、「大きさ=(ブロックよりもサイズが小さい)ステーキ肉」に変えて比較実験を行う。食品用脱水シートを使い、以下の3パターンでそれぞれの仕上がりの違いを比べてみる。
牛タン ステーキ肉を、
①BONIQ→バッグに塩・こしょうを入れて肉に含ませる→焼き色をつける
②脱水12時間→BONIQ→バッグに塩・こしょうを入れて肉に含ませる→焼き色をつける
③脱水24時間→BONIQ→バッグに塩・こしょうを入れて肉に含ませる→焼き色をつける塩を入れるタイミングはすべて低温調理後にバッグに塩を入れて肉に含ませることとする。(「58℃ ローストビーフ低温調理 塩投入比較」参照:「低温調理後、塩をバッグに入れて含ませる」が一番歯切れがよく、ジューシーであるという結果になった。)
なお、上記実験では「低温調理後バッグに塩を入れ、1時間置いて含ませる」こととしているが、今回の実験では便宜上「低温調理後バッグに塩・こしょうを入れ、5分間置いて含ませた後実食」とする。
BONIQ設定
58℃
2:40(2時間40分)※参照:「低温調理 加熱時間基準表(牛肉)」
材料
<実験①〜③>
・牛タン(ステーキ肉、厚さ3cm) 250g
・オリーブオイル 大さじ1
・塩 2.5g(肉の重量の1%)
・こしょう 適量当レシピの栄養素
栄養素(1人分) 1日の推奨摂取量 低糖質レベル ★★★(一食:糖質5g 以下) カロリー 383.6 kcal - 糖質 0.2 g - タンパク質 13.3 g 体重 x 1.2g ~ 1.5 g 脂質 34.8 g - 食物繊維 0 g 20 g 以上 カリウム 230 mg 3500 mg 以上 カルシウム 3 mg 650 mg 以上 マグネシウム 15 mg 350 mg 以上 鉄分 2 mg 7.5 mg 以上 亜鉛 2.8 mg 10 mg 以上 塩分 0.2 g - ※上記はレシピの100gあたりの栄養価を計算しています。
《手順》
比較実験
①BONIQ→バッグに塩・こしょうを入れて肉に含ませる→焼き色をつける
②脱水12時間→BONIQ→バッグに塩・こしょうを入れて肉に含ませる→焼き色をつける
③脱水24時間→BONIQ→バッグに塩・こしょうを入れて肉に含ませる→焼き色をつける
脱水は牛タンを食品用脱水シート(「ピチット」を使用)で包み、冷蔵庫に保管して行う。
③は脱水12時間経過後、シートを新しいものに交換する。
BONIQは58℃ 2時間40分行う。
BONIQの終了タイマーが鳴ったらそれぞれバッグを開けて塩・こしょうを入れ、肉に含ませる。
フライパン(強火)で牛タンの表面に焼き色をつける。
スライスし、比較試食を行う。
比較実験結果
まずバッグに残ったドリップの量を比べてみる。
脱水を行なっていない①に比べて、脱水を行なった②(脱水12時間)と③(脱水24時間)のドリップ量の方が明らかに少ない。
特に、脱水24時間後BONIQした③のドリップ量の少なさは顕著である。
②、③は脱水後に牛タンの重量が減少(②-25g、③-35g)していたことからも、その分低温調理時に出るドリップの量も減ったと考えられる。
調理前の牛タンの重量が250gだったことから、12時間の脱水でも10%の水分を減らすことができた。
写真左から、③脱水24時間、②脱水12時間、①脱水なし
次に実食してみると、①(脱水なし)に比べて②(脱水12時間)は肉の風味や旨み、そして甘みをよりダイレクトに強く感じる。
さらに、③(脱水24時間)は②(脱水12時間)よりもやわらかいのにしっかりした肉質になっている。
温度ではなく肉の水分量の違いでもここまで差が出るのか、と驚くレベルである。
②、③と比べると①は少し水っぽく、また味も薄く感じられるほどである。
ということで、
総合的な美味しさ ③>②>①
間違えてはいけないのは②、③と共に①の「脱水なし」の3つの方法とも、従来のフライパンで焼いたりする調理法に比べて格段にやわらかくジューシーであり、ここではどれが大関でどれが横綱かというハイレベルの話である。
それにしても低温調理前の脱水効果は大きい。
前回の牛もも編(「58℃ 脱水は有効?低温調理比較実験 牛もも編」)でも「脱水した方がおいしくなる」という結果になったが、②(脱水12時間)と③(脱水24時間)の差はここまで大きくなかった。
牛もも→牛タン、ブロック肉(400g)→ステーキ肉(250g)と部位・サイズを変えた今回の実験では、「③脱水24時間後BONIQ」が1番ベストな仕上がりであるという明確な結果となった。
これだけ差が出るのであれば、牛もも肉、ブロック肉に続き牛タン肉、ステーキ肉でも、ぜひ「脱水後低温調理」をおすすめしたい。
《作る際のポイント》
脱水シートの給水量には限度があります。使用するシートにもよりますが、長時間脱水を行う際は必要に応じて新しいシートに交換してください。
《作った感想》
牛タン肉、サイズが小さいステーキ肉も、脱水した方がおいしくなる!
牛もも編(「58℃ 脱水は有効?低温調理比較実験 牛もも編」)の結果からも、実験前に予測をしていた通り(むしろ、それ以上!)の違いが見られました。
もっと薄い肉でも同じ結果となるのか?
まだ検証は必要ですが、今後は時間が許す限り肉の脱水を行なった上で調理するようにしたいと思います。
BONIQ管理栄養士による栄養アドバイス
牛タンは100gあたり356kcal、たんぱく質は13.3g、脂質は31.8gと脂質が多めの部位です。
牛タンを食べて脂っぽさを感じたことがある人は少ないと思いますが、霜降り状態に脂質が含まれているため脂質の含有量が多いのです。
脂が気にならないという点は利点でもあります。暑さや加齢のために食が細くなっている人のエネルギー補給源として、牛タンはおすすめの部位と言えます。
牛タンはエネルギー以外にも、ビタミンB群や鉄が多い部位です。
ビタミンB群の中でも特にビタミンB2は100gあたり0.3mg含まれており、1日の摂取推奨量の1/3弱をカバーできる量です。*
ビタミンB2は糖質・脂質・たんぱく質の代謝や、皮膚・髪の毛の再生に必要な栄養素です。不足すると口内炎や口角炎を招きやすくなるため、マイナートラブルの防止として意識的に摂取するようにしましょう。
鉄を100gあたり2mg含みます。牛肉の赤身には鉄の含有量が多いのですが、牛タンの鉄の量は赤身よりは少な目です。
牛タンは独特の食感と旨味にファンが多い部位です。メインとしてたまに食べたり焼き肉の1品として楽しむには栄養価的にお勧めの部位ですが、常食するのであればやはり赤身の牛肉の方が健康的です。
*厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
<低温調理 脱水は有効?比較実験シリーズ>
58℃ 脱水は有効?低温調理比較実験 牛もも編
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【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。
また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防
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