牛肉レシピ

牛ももローストビーフ いつ焼くべきか?比較実験

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BONIQマニアにおくる、低温調理の疑問あれこれの検証。
日々低温調理をしていると、食材がこんなに美味しくなるのか!という感動がある一方、本当にこれで良いのか?もっとベストな方法があるのではないか?という疑問も同時にわいてくる。
最近では低温調理のメソッドに関する情報が増えつつあるが、それが本当に正しいのか?
実際調理をする中で出てきた疑問を検証してみる。

低温調理のローストビーフはBONIQレシピの中でも人気料理の一つである。
ところがこのローストビーフ、実際に“ロースト”しているわけではない。
“ロースト”とは食材をオーブンに入れて焼き目がつくまで焼いたり、串刺しにした食材を直火で炙ったりする調理法である。厳密に言うと、低温調理の湯せんで仕上げた塊肉の牛肉料理は“ローストビーフ”ではない。しかし、料理をイメージしやすいように“ローストビーフ”と言っている。
従来法のオーブンでローストする方法では、肉の表面がカリッと褐色になり(=メイラード反応)肉に香ばしさを与え複雑な香りが生まれる。
湯せんによる低温調理の弱点はまさにここで、メイラード反応が起こせない。それを補うために、これまでBONIQのローストビーフやステーキのレシピでは、低温調理前に肉の表面を焼いたり、調理後に肉を焼いたりしていた。そうすることで、肉に香ばしさを与えていた。
では肉の表面を焼くのは低温調理「前」が良いのか?「後」が良いのか?
生の塊肉の表面を強火でしっかり焼いて旨みを閉じ込める下処理は、「リソレ」と言ってフランス料理の中で最も重要な技法の一つである。「低温調理前」に肉の表面を焼くのは、湯せんの低温調理ではどこまで有効なのか?
「低温調理後」に表面を焼いた方がパリッと香ばしく仕上がるのではないか?

そこでオーストラリア産牛もも(厚さ4cm)を使い、
実験①:低温調理「前」に表面を焼く(表面焼く→BONIQ→バッグに塩を入れて肉に含ませる)  
実験②:低温調理「後」に表面を焼く(BONIQ→バッグに塩を入れて肉に含ませる→表面焼く) 
実験③:焼かない(BONIQ→バッグに塩を入れて肉に含ませる)
 
低温調理「前」に肉の表面を焼くことで、調理中のドリップの流出を抑えて旨みを閉じ込めることができるのか?仕上がりの香ばしさが半減しないか?
低温調理「後」に焼くと、パリッと香ばしくなるのを期待する反面、内部の温度が上昇してしまうのか?
実験①②の「焼く」ものと比べて③「焼かない」ものはドリップの流出や香ばしさの点でどれくらい違うのか?
   
この時、塩を入れるタイミングは低温調理後にバッグに塩を入れて肉に含ませることとする。(「58℃ ローストビーフ低温調理 塩投入比較」参照:「低温調理後、塩をバッグに入れて含ませる」が一番歯切れがよく、ジューシーであるという結果になった。)

BONIQ設定

57℃
04:15(4時間15分)
※参照:低温調理 加熱時間基準表

材料


<実験①~③>
・牛もも肉(オーストラリア産)  各1本(厚さ4cm/180g)
・塩  各1.6g(肉の重量の約0.9%)

《手順》

比較実験

すべて同じ大きさ、厚さに整えた牛もも肉をそれぞれの工程で調理する。

実験①:低温調理「前」に表面を焼く(表面焼く→BONIQ→バッグに塩を入れて肉に含ませる)  
実験②:低温調理「後」に表面を焼く(BONIQ→バッグに塩を入れて肉に含ませる→表面焼く) 
実験③:焼かない(BONIQ→バッグに塩を入れて肉に含ませる)

BONIQは57℃ 4時間15分行う。
BONIQの終了タイマーが鳴ったらそれぞれバッグを開けて塩を入れ、肉に含ませ冷却する。
その後50℃まで温め、比較試食を行う。



比較実験結果



実験①:低温調理「前」に表面を焼く   
実験②:低温調理「後」に表面を焼く 
実験③:焼かない 

全て50℃の湯せんで温めたところで、まずドリップの量を比べてみる。
②③はどちらもまだ焼いていおらず同じ状態なので、ほぼ同じ量となる(2gは誤差の範囲)のは当たり前であるが、それに比べ①はドリップが少ない。やはり低温調理「前」に肉の表面を焼き固めることで、調理中のドリップの流出を抑えられたということか。①が一番ジューシーなのではと期待できる。

そして低温調理後に表面を焼いた②は50℃→約53℃と、内部に火が入りすぎることはなかった。
例えば一次加熱温度の57℃まで最初に温めた状態で表面を焼けば、内部温度が狙った芯温よりも上がってしまう。なので調理後に表面を焼くのなら、温めはやや低めの温度にとどめておいた方が良いということになる。

次はもも肉をスライスして実食に移る。
①も香ばしい香りがするが、②は仕上げ時に焼いている分、もっとフレッシュで香ばしい香りがする。②はツヤツヤして見るからに美味しそうな見た目に仕上がっている。しかし、①②は③と比べて断然硬くなっている。2~3㎜くらいとかなり薄くスライスしているにも関わらず、①②はかなり嚙み応えがある。表面だけさっと焼いただけであるが、焼かないものとの噛み応えの差は歴然である。
③は焼いていないので香ばしさが物足りないが、一番柔らかい。しかもドリップが少なかった①よりしっとりしているように感じる。

見た目 ②>①>③
香ばしさ ②>①>③
ジューシーさ ③≒①>②
柔らかさ ③>①≒②
総合的な美味しさ ③>①≒②

①②で焼けた肉の香ばしさが加わるのも良いが、やはり硬さが気になる。それならば焼かずに柔らかい③の方が良いと感じた。
今回使用したのは“牛もも”であり、脂が少なく硬い肉質なので、美味しいポイントとして「柔らかさ」が優先されたのかもしれない。例えば“ヒレ”などであれば元々柔らかい肉質なので、どれも柔らかく仕上がるとしたら、また結果が違うかもしれない。
今回は「③焼かない」方が良いという結果になったが、55℃でホールディング(24時間や36時間などと長時間一定の温度で保温)することで①②に柔らかさを加えられるのなら、“香ばしさ”と“柔らかさ”を両立した牛もものローストビーフができるかもしれない。(参照:「ホールディングは有効?比較実験~牛ももVo.2~」「ホールディングは有効?比較実験~牛ももVo.3~」)

《作った感想》
①②の焼けた肉の香ばしい香りはとても食欲をそそり、味も間違いなく美味しいのですが、今回は③の柔らかさの方が強く印象に残りました。しかし、香ばしさが足りないという面では完璧なローストビーフとは言えません。それぞれのやり方に一長一短が見つかりました。
“香ばしさ”と“柔らかさ”を両立した究極のローストビーフが出来るのか?
他の部位ではどうなるのか?
さらなる研究をすすめたいと思います。

<ローストビーフの低温調理 いつ焼くべきか?比較実験シリーズ>
牛ヒレローストビーフいつ焼くべきか?比較実験
牛ももローストビーフ いつ焼くべきか?比較実験

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【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。


また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防

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小野寺 桂子
大学卒業後にフレンチを学びにル・コルドン・ブルー・ロンドンへ留学。 その後、La Maison Courtineパリにて料理人をした後、フレンチの鉄人坂井氏がプロデュースの大阪の名門フレンチ ラ・ロシェルにて従事。食育インストラクター・アスリートフードマイスター3級・日本ソムリエ協会公認ソムリエ。お酒にマッチするBONIQレシピを提案させていただきます。
小野寺 桂子

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コメント

    • たけしー
    • 2022.11.06

    私は最後に調理用バーナーで炙っていますが、ぜひこれも比較頂きたいです。
    なんとなく、フライパンよりも一気に焦げ目をつけられるので、肉が固くなりにくいんじゃないかと思ってやってます。

    • BONIQ

      コメントありがとうございます!
      部位が牛ヒレにはなってしまいますが、続編の比較実験の下記でバーナーで焼いた場合も検証しております。
      ぜひご覧くださいませ。

      牛ヒレローストビーフいつ焼くべきか?比較実験
      https://boniq.jp/recipe/?p=26234

      厚みのある肉の場合は、まさにやられている「バーナーで後焼き」でおいしくいただけると思います^^

BONIQ設定

  • 57℃
  • 04:15(4時間15分)

材料一覧

  • <実験①~③>
  • ・牛もも肉(オーストラリア産)  各1本(厚さ4cm/180g)
  • ・塩  各1.6g(肉の重量の約0.9%)

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