牛肉の低温調理は安全?リステリアを基準に55℃から設計するBONIQ加熱表

「牛はレアで食べられるのに、豚はだめ」。
多くの人がそう理解しています。半分は当たっていますが、その理由を説明できる人はほとんどいません。

結論から言います。牛肉は低温調理で安全に仕上げられます。ただし「牛はレアでいい」という感覚と、BONIQの加熱時間基準表(ttguide)が牛肉を55℃から設計している理由は、まったく別のものです。前者は汚染が主に表面にあるという話で、後者は中心まで何℃で何分保つかという話です。この2つを混ぜると、「表面を強火で焼いたから中は生でいい」という、いちばん危ない結論に着地します。

本記事では、BONIQの牛・ラム肉表がリステリア・モノサイトゲネスを基準に55℃から始まる理由と、公的な基準との関係を整理します。低温調理全体の安全性の考え方は「低温調理は危ない」は本当かに、鶏肉は鶏むね肉の低温調理は安全?、豚とジビエは豚肉・ジビエの低温調理は安全?にまとめています。

編集・安全基準照合:BONIQ(2026年9月2日)

この記事の要点(先に結論)

  • BONIQの牛・ラム肉表は、リステリア・モノサイトゲネスのD値/Z値を使い、6-log reduction(菌数を100万分の1に減らすこと)を目標に55℃から設計されています。牛肉の基準病原体はE型肝炎ウイルスではありません。
  • 初期温度5℃・厚さ2cmなら、55℃で合計4時間30分、63℃で1時間05分(ttguide P.2 牛肉・ラム肉表)。表の時間は「中心が設定温度に達するまで」と「殺菌に必要な芯温保持」の合計です。
  • 55℃は危険温度帯ではありません。放置を避ける10〜54℃と、管理された加熱工程の55℃は別のものです。リステリアが増殖できるのは45℃までで、55℃は増殖域の外にあります。
  • 4時間30分のうち3時間40分は芯温保持、つまり殺菌時間そのものです。「4時間半も低温に置くから危ない」という読み方は、表の構造を取り違えています。
  • BONIQ牛・ラム肉表の芯温保持時間は、事業者向けの「特定加熱食肉製品」の基準より一貫して長く、55〜62℃ではおおむね2.2〜2.8倍です(55℃で220分 対 97分)。事業者向けの短い数字を家庭に持ち込まない、というのが前提の違いです。
  • 家庭向けの公的条件は別にあります。食品安全委員会は、家庭で入手できる牛肉には中心63℃30分以上(または70℃3分、75℃1分)を案内しています。基準病原体は腸管出血性大腸菌O157です。牛・ラム肉表の63℃の芯温保持15分より長い側なので、履歴の分からない肉や余裕を取りたい場合はこちらを選んでください。
  • 同じ63℃でも、合計時間は牛1時間05分・鶏1時間00分・豚1時間20分と違います。表ごとに対象にしている病原体が違うため、他の食材の表から値を借りることはできません。
  • ひき肉・成形肉・筋切り肉も低温調理できます。内部汚染を前提に、成形後の最大厚みで表を引けばよいだけです。ただし牛豚の合い挽きは、条件の厳しい豚肉・ジビエ表を引きます。
  • 高齢者、子ども、妊娠中の方、免疫が落ちている方に出すなら、温度を選ぶ段階から中心75℃1分以上に切り替えてください。

なぜ牛はレアで食べられて、豚はだめなのか

法制度から見ると、牛と豚の扱いは非対称です。

豚は2015年6月12日から、食品衛生法に基づく規格基準で生食用としての販売・提供が禁止されています。条件は「中心部の温度を63℃で30分間以上、またはこれと同等以上」。理由は、E型肝炎ウイルスや寄生虫が筋肉そのものの中にいる可能性があり、内部までの加熱以外にリスクを下げる手立てが考えられないことです。

牛にも規格基準はあります。ただし中身が違います。2011年10月1日から適用されている「生食用食肉(牛肉)」の規格基準は、生食を禁止するのではなく、生食用として売るための条件を定めたものです。対象はユッケ、タルタルステーキ、牛刺し、牛たたきなど、生食用として提供される牛の食肉(内臓を除く)です。ステーキは、規格基準を設定した2011年時点で腸管出血性大腸菌およびサルモネラ属菌を原因とする食中毒事例が報告されていなかったことから、対象になっていません(同年の規格基準設定に関するQ&Aによる)。

そして、その加工基準の核心はここです。肉塊の表面から深さ1cm以上の部分までを60℃で2分間以上加熱し、速やかに4℃以下に冷却すること。

つまり日本の制度は、牛について「表面を殺菌すれば中心は生のまま提供できる」という設計を採っています。豚が「中心まで加熱せよ」なのに対して、牛は「表面1cmを加熱せよ」です。ここが、牛にレアという選択肢がある理由です。相手にしている病原体が、筋肉の中ではなく主に表面にいるからです。

ただし、この設計が成立するのは事業者の加工だけです。加工基準は、専用の設備と器具を使い、器具は肉塊ごとに83℃以上の温湯で洗浄消毒し、加工は資格を持つ人が行い、腸内細菌科菌群が陰性であることを確認し、記録を1年間保存することまで求めています。家庭のキッチンで満たせる条件ではありません。家庭で牛肉を扱うときは、この設計をそのまま真似るのではなく、あとで見る加熱条件を使います。

ところが——ここを読み飛ばすと危険なのですが——この規格基準を作るときに実施された試験では、次のことが確認されています。牛のとさつ・解体後、熟成が進むにつれて腸管出血性大腸菌がより深部に浸潤すること。菌体を生肉に接種した1時間後には、肉塊の表面から1cmの部分から菌体が検出されたこと。

だから現行の基準は、切り出した肉塊を熟成させずに速やかに加熱殺菌することを求めています。凍結させていない肉塊を使うのも、凍結で組織が壊れると菌が内部へ浸潤しやすくなるためです。さらに、テンダライズ(刃で筋・繊維を短く切断する処理)、タンブリング(調味料に浸潤させる処理)、結着成形は禁止されています。

もうひとつ重要なのは、従来おこなわれていたトリミング処理が、この基準では否定されたことです。肉塊の表面が汚染されていた場合、トリミングは菌の汚染を拡散させる可能性がある、と指摘されました。だから「表面を削る」ではなく「表面を加熱する」に切り替わったわけです。

ここまでを整理すると、「牛の汚染は表面にある」は出発点としては正しいものの、条件つきです。時間が経てば内部へ入りますし、刃を入れたり漬け込んだりすれば運ばれます。そして削って落とすこともできません。

だからBONIQの牛・ラム肉表は、表面ではなく中心まで加熱する前提で作られています。生食用食肉の規格基準とは、別の設計です。55℃・4時間30分で仕上げたローストビーフは、生食用食肉ではありません。表面1cmだけを殺菌した半生の肉ではなく、厚みの全体に条件を通した加熱済みの肉です。

牛肉と豚肉で規格基準の設計が異なることを示す図解
図1:豚は「中心まで加熱」、牛は「表面1cmを加熱」。制度の設計が違うのは、相手にしている病原体のいる場所が違うからです。ただし熟成や刃入れで内部へ運ばれるため、削り落とす発想は採られていません。

BONIQの牛・ラム肉表が55℃から始まる理由

ここから、低温調理の話になります。

BONIQの牛・ラム肉表は、リステリア・モノサイトゲネスのD値/Z値を使い、6-log reductionを目標に55℃から70℃まで設計されています。腸管出血性大腸菌でもE型肝炎ウイルスでもなく、リステリアです。

なぜリステリアなのか。公的資料から確認できる理由は2つあります。

ひとつは、この菌が冷蔵温度でも増えることです。厚生労働省は、リステリアは他の一般的な食中毒菌と同様に加熱により死滅するが、4℃以下の低温や12%食塩濃度下でも増殖できる点が特徴だと説明しています。食品安全委員会の評価書によれば、増殖可能な温度範囲はマイナス0.4℃から45℃で、至適温度は37℃です。低温調理は「作って冷やして保存する」工程を含むため、冷蔵庫の中で増える菌を基準に置くのは筋が通っています。

もうひとつは、食肉の中で加熱抵抗性が高いことです。食品安全委員会の評価書は、各種食品中のリステリアのD値——最初に生存していた菌数を10分の1に減らすのに要する加熱時間——を次のようにまとめています。

温度 D値(分) 実験に用いられた食品の例(D値:分)
50℃ 13.33〜179 キャベツジュース(13.33)、鶏モモ肉(179)
55℃ 4.5〜21 水で溶解した脱脂粉乳(4.5)、牛肉(21)
60℃ 0.63〜16.7 リン酸緩衝液(0.63)、塩漬ひき肉(16.7)
65℃ 0.1〜0.93 水で溶解した脱脂粉乳(0.1)、牛肉(0.93)
70℃ 0.023〜0.27 水で溶解した脱脂粉乳(0.023)、破砕したニンジン(0.27)

(出典:食品安全委員会「食品中のリステリア・モノサイトゲネス」(2013年5月20日 評価結果通知)表5 各種食品中のLMの温度別D値)

この表の読みどころは、幅の広さです。同じ55℃でも、脱脂粉乳の中なら4.5分、牛肉の中なら21分。4倍以上違います。評価書も、食肉中ではD値が高いことが観察されており、食品中の脂肪の存在によって加熱抵抗性が増すと述べています。

そして、この幅こそが「表が必要な理由」です。菌の名前と温度だけでは必要な時間は出ません。どの食品の中にいるか、脂肪がどれだけあるか、水分活性がどうかで、同じ温度でも桁が変わります。だから食材ごとに表を分ける必要があり、単一のD値から必要時間を自分で逆算することはできません。

そのうえで、桁の感覚だけ添えておきます。上の表で牛肉の55℃のD値は21分です。55℃の環境では、菌数が10分の1に減るまで21分かかる、という速さです。一方、BONIQの牛・ラム肉表が55℃に置いている芯温保持時間は3時間40分です。この桁で設計されている、ということだけ受け取ってください。

ここから読者が別の温度の必要時間を逆算することはできません。理由は2つあります。ひとつは、上の21分がBONIQの算出値ではなく、公的資料が別の文献から引用した一例だからです。菌株や食品組成が違えばD値は動きます。もうひとつは、中心温度が上がっていく途中でも殺菌が進んでいるため、芯温保持時間だけを切り出してD値と突き合わせる計算では、表の設計を再現できないからです。必要な時間は、食材区分と厚みごとに表から読んでください。

最後に、大切な限定をひとつ。6-log reductionは無菌化を意味しません。食中毒リスクがゼロになるわけでもありません。菌数を100万分の1まで下げるという到達目標であって、そこに至るには食材区分・初期温度・最大厚み・合計時間を一組で守る必要があります。どれかひとつを外せば、目標は成立しません。

55℃・4時間30分の「4時間30分」の中身

牛肉の低温調理でいちばん誤解されているのが、この時間の意味です。

BONIQの基準表に載っている時間は、2つの合計です。食材の中心が設定温度に達するまでの時間と、殺菌に必要な芯温保持時間。この合算値が表に書かれているので、厚みを測って表を引けば、殺菌工学の計算を自分でやらなくても条件を満たせます。

牛・ラム肉表の55℃・厚さ2cmを分解してみます。合計は4時間30分。同じ行の芯温保持は3時間40分です。差し引くと、中心が55℃に届くまでが約50分ということになります。

この読み方が合っているかは、別の行で検算できます。同じ厚さ2cmの63℃行は、合計1時間05分・芯温保持15分。差は約50分です。設定温度が違っても、厚さ2cmの肉の中心に熱が届くまでの時間はほぼ同じはずなので、数字は整合しています。

つまり4時間30分のうち、3時間40分は殺菌時間そのものです。「4時間半も低温に置いておくのは怖い」という感覚は、この構造を取り違えています。長いのは、リステリアを相手にするために必要だからです。短くできないから短くしていない、というだけのことです。

逆に、65℃以上になると芯温保持は表の最小単位である5分に達し、合計時間はほぼ中心到達時間だけで決まります。実際、牛・ラム肉表の65℃から69℃の行は、どの厚みでも同じ値が並んでいます。この帯で合計時間を決めているのは、殺菌時間ではなく厚みです。

55℃・厚さ2cmの合計4時間30分が中心到達時間と芯温保持時間に分かれることを示す図解
図2:表の時間は「中心到達までの時間」+「芯温保持の時間」。55℃・2cmの4時間30分のうち、3時間40分は殺菌時間です。

そして、加熱時間は重さではなく厚みで決まります。同じ400gの牛ももでも、厚く切るか薄く開くかで、中心に熱が届くまでの時間はまるで違います。調理前に、いちばん厚い部分を測ります。これが出発点になります。

55℃は「危険温度帯」ではない

「危険温度帯」という言葉を聞いたことがある方は、55℃という設定に不安を覚えるかもしれません。ここを整理しておきます。

危険温度帯は、加熱の前後に食品を長く置かないための概念です。菌が増えやすい温度の帯を示したもので、加熱設定温度の禁止帯ではありません。BONIQが案内している放置を避ける帯は10〜54℃です。

一方、リステリアが増殖できる温度は、食品安全委員会の評価書によればマイナス0.4℃から45℃までです。至適は37℃。つまり55℃は、この菌の増殖域より上にあります。増える温度ではなく、減る温度です。上のD値表が示しているのは、55℃が「菌が減っていく速さを測れる温度」だということです。

ここで気づいてほしいのは、逆側の話です。リステリアの増殖域はマイナス0.4℃から始まっています。家庭の冷蔵庫は、この範囲の内側です。厚生労働省も、食品を冷蔵庫で保存したり塩漬けしていると食中毒菌が増えないと思いがちだが、このような条件でもリステリアは増殖する、と注意を促しています。

だから、低温調理で警戒すべきなのは加熱中ではなく、加熱の前後です。原因になるのは、加熱前の室温放置、加熱後のゆっくりした冷却、そして冷蔵庫での長期保存です。この3つが、10〜54℃の帯を長く通過させます。

管理された55℃の加熱は、菌が減る工程です。管理されていない25℃の放置は、菌が増える工程です。同じ「低い温度」でも、意味が正反対になります。

リステリアの増殖温度域と放置を避ける温度帯、BONIQ牛・ラム肉表の加熱温度域を並べた図解
図3:リステリアが増えるのは−0.4〜45℃。放置を避けるのは10〜54℃。牛・ラム肉表が使うのは55〜70℃です。冷蔵庫の中も増殖域に入っています。

事業者向けの「58℃28分」を、家庭にそのまま持ち込まない

ローストビーフを調べていると、55℃97分、58℃28分、63℃瞬時といった数字に出会うことがあります。これは実在する公的な基準ですが、家庭の低温調理の条件ではありません。

出どころは、食品衛生法の規格基準にある「特定加熱食肉製品」です。中心部を63℃で30分間加熱する方法以外の方法で加熱殺菌した食肉製品、という区分で、事業者がローストビーフを製造・販売するときの製造基準です。中心温度ごとの必要時間は、次のように定められています。

中心温度 特定加熱食肉製品(事業者向け製造基準) BONIQ牛・ラム肉表の芯温保持
55℃ 97分 3時間40分
56℃ 64分 2時間30分
57℃ 43分 1時間45分
58℃ 28分 1時間10分
59℃ 19分 45分
60℃ 12分 30分
61℃ 9分 25分
62℃ 6分 15分
63℃ 瞬時 15分

(出典:厚生労働省「食品、添加物等の規格基準」食肉製品の項 3 特定加熱食肉製品 / BONIQ 加熱時間基準表 P.2 牛肉・ラム肉表の芯温保持列)

並べると、BONIQの芯温保持時間は、この事業者向け基準に対してはどの温度でも長くなっています。55℃から62℃ではおおむね2.2〜2.8倍で、55℃なら97分に対して220分です。63℃は事業者向けが「瞬時」なので倍率では表せませんが、BONIQは15分を置いています。ただしこれは、特定加熱食肉製品との比較にかぎった話です。

ではなぜ、事業者向けの短い数字を家庭に持ち込んではいけないのか。時間以外の条件が付いているからです。特定加熱食肉製品の製造基準は、加熱時間だけを定めているわけではありません。原料食肉は、と殺後24時間以内に4℃以下へ冷却し、その後も4℃以下で保存したpH6.0以下の肉塊でなければなりません。整形は食肉の温度が10℃を超えないように行い、調味料は食肉の表面にのみ塗布します。加熱中は、製品の中心部が35℃以上52℃未満である時間を170分以内に収めます。加熱後の冷却では、中心部が25℃以上55℃未満である時間を200分以内に収めます。

家庭のキッチンで、pHを測り、原料肉のと殺後の履歴を管理し、中心部が35〜52℃を通過する時間を計測できる人はほとんどいません。この工程管理が付いて初めて成立する時間なので、時間だけを抜き出すと前提が抜け落ちます。

BONIQの牛・ラム肉表は、この基準を家庭向けに緩めたものではありません。食材の初期温度5℃、最大厚み、中心到達時間、リステリアの殺菌時間を含めて、別に設計された表です。根拠も前提も違うので、両者の数字を混ぜて使わないでください。

家庭向けの公的条件は「中心63℃30分以上」

では、家庭には公的な条件がないのか。あります。

食品安全委員会は、家庭や飲食店で入手できる牛肉を低温調理する場合、中心部の温度を63℃で30分間以上、またはこれと同等以上の効力を有する方法で加熱するよう案内しています。同等の条件として70℃3分間、75℃1分間も挙げられています。想定している相手は、ここまで見てきたリステリアではなく、腸管出血性大腸菌O157です。食品安全委員会は、牛肉の調理でとくに怖いのはO157であり、食中毒死亡事故も起きていると書いています。

この案内は、2024年3月に明確化されたものです。それ以前、同じページには牛肉の低温調理の条件として58℃28分または63℃瞬時が載っていました。食品安全委員会はこれを訂正し、当該条件は特定加熱食肉製品の規格基準に適合した食肉を使うことを前提とした数字であって、すべての牛肉には当てはまらない、と明記しました。そのうえで、一般に家庭で消費者が入手可能な食肉を用いる場合には中心部を63℃30分加熱する方法またはこれと同等以上の効力を有する方法が必要である、としています。

つまり、前の節で書いた「事業者向けの数字を家庭に持ち込まない」は、私たちの独自見解ではありません。公的機関が自ら訂正を出して、同じことを言っています。

そのうえで、BONIQの牛・ラム肉表との関係をはっきり書いておきます。

BONIQの表は、この公的案内を家庭向けに置き換えたものではありません。リステリアの6-log reductionを目標に、初期温度・最大厚み・中心到達時間を含めて別に算出した表です。目標に置いている病原体が違うので、同じ63℃という表示でも保持時間は一致しません。公的案内は63℃で30分、牛・ラム肉表の63℃の芯温保持は15分です。数字だけを見れば、牛・ラム肉表の63℃は公的案内より短い側にあります。

どちらを選ぶか。厚みを測り、履歴の分かる肉を使い、表どおりの合計時間を守れるなら、牛・ラム肉表で設計できます。次のような場合は、公的案内の中心63℃30分以上(または70℃3分、75℃1分)を選んでください。

  • 肉の来歴や冷蔵していた期間が分からない場合
  • ひき肉、成形肉、筋切りやテンダライズをした肉、タレに漬け込んだ肉を扱う場合
  • とにかく余裕を大きく取りたい場合
  • 高齢者、妊娠中の方、乳幼児、免疫機能が低下している方が食べる場合(この場合は中心75℃1分以上がより確実です)

公的条件とBONIQの表は、どちらかがどちらかを否定するものではありません。「中心まで、測れる条件を通す」という考え方は同じです。違うのは、置いている目標と、そこから逆算した時間です。迷ったら、厳しい側を選んでください。

参考:食品安全委員会「肉を低温で安全においしく調理するコツ」

同じ63℃でも、牛と鶏と豚で時間が違う

「63℃30分」という数字は、あまりに有名になりすぎました。あれを覚えておけば全部いける、と思ってしまいます。実際は、そうなりません。

BONIQの基準表から、同じ条件——初期温度5℃・厚さ2cm・63℃——を3つの表で引き比べてみます。

食材区分 合計時間 うち芯温保持 表の下限温度(2cmの合計時間)
牛肉・ラム肉 1時間05分 15分 55℃(4時間30分)
鶏肉 1時間00分 10分 57℃(2時間40分)
豚肉・ジビエ 1時間20分 30分 61℃(2時間10分)

(出典:BONIQ 加熱時間基準表 P.2 牛肉・ラム肉表、P.3 鶏肉表・豚肉・ジビエ表)

同じ温度、同じ厚みなのに、合計時間は最大で20分ずれます。芯温保持で見ると、牛15分・鶏10分・豚30分で、豚は牛の2倍です。

この差は、表ごとに対象にしている病原体が違うことから来ています。牛・ラム肉表はリステリア、鶏肉表はサルモネラやリステリアなど、豚肉・ジビエ表はE型肝炎ウイルスと食中毒菌です。

いちばん分かりやすいのが、豚の63℃の芯温保持30分です。これは厚生労働省が定める「中心部の温度を63℃で30分間以上」とぴたりと一致します。豚肉・ジビエ表は、公的な食肉基準を出発点にしているからです。

一方、牛の63℃の芯温保持は15分です。公的条件の転記ではありません。リステリアのD値/Z値から算出した、牛肉表としての値です。

だから、他の表の値を機械的に借りることはできません。ただし方向によって意味が変わります。長い側へ借りるのは、時間が伸びるだけなので安全側に転びます。牛を63℃で30分保つのは、さきほど見た食品安全委員会の家庭向け条件を満たす選択です。危険なのは逆向き、つまり短い側や低い側を借りることです。牛が55℃から設計されているのを見て豚を55℃で調理すれば、E型肝炎ウイルスが生き残る温度帯に入ります。表は食材区分ごとに独立して引き、迷ったら時間が長くなる側を選んでください。

なお、BONIQの表には0.5℃刻みの行がありません。57.5℃のように0.5℃刻みで設定したい場合は、原則をひとつ覚えてください。使う行の温度は、実際の設定温度と同じか、それより低い行にします。

表の時間は「中心が設定温度に達するまでの時間」と「その温度での芯温保持時間」の合計です。だから中心が行の温度に届かないと、その行の保持時間は成立しません。57.5℃の湯では、中心は57.5℃付近までしか上がりません。

これを当てはめると、選び方は2つです。57.5℃のまま仕上げたいなら、時間は57℃行を使います。初期温度5℃・厚さ2cmなら2時間35分。中心は57℃を超えるので、57℃行の保持時間を満たせます。58℃行の時間(2cmで2時間)を使いたいなら、設定温度そのものを58℃にしてください。

やってはいけないのは、設定を57.5℃のままにして58℃行の短い時間で切り上げることです。表にない温度を自分で換算して作らない、というのも同じ理由です。

管理していない火入れと、数値で管理する火入れ

牛肉は、火を通しすぎれば硬くパサつき、通し足りなければ不安が残ります。この不安の正体は、道具の性能ではありません。管理していない項目があることです。

管理項目 管理していない状態 数値で管理する状態
最大厚み 重さや見た目で判断する いちばん厚い部分を実測する
中心温度 断面の赤みや肉汁の色から推測する 基準表または芯温計で確認する
保持時間 加熱を始めた時点から数える 中心が到達してからの必要時間を確保する
二次汚染対策 同じまな板・トングを使い回す 生肉用と加熱後用を分け、ドリップを他の食材につけない
加熱後 室温に置いたままにする すぐ食べるか、袋ごと氷水で急冷する

低温調理の価値は、器具の優劣ではなく、この5つを数値と手順で押さえられることにあります。感覚で「もう大丈夫だろう」と判断していた工程を、厚み・温度・時間という確認できる形に置き換えます。

二次汚染対策を表に入れているのには理由があります。牛の場合、警戒すべき腸管出血性大腸菌は主に表面にいます。つまり、生肉に触れた手・包丁・まな板が、そのまま汚染の運び手になります。中心の加熱条件を完璧に満たしても、加熱後のローストビーフを生肉と同じまな板で切れば、そこで台無しになります。加熱条件と衛生手順は、どちらか一方では成立しません。

塊肉とひき肉は、同じ表で引けるのか

牛の汚染が主に表面にあるという話には、当然の続きがあります。表面を強火で焼けば、中は生でいいのではないか、という発想です。

これは成り立ちません。理由は3つあります。

ひとつは、汚染が表面だけにとどまらないことです。前に見たとおり、規格基準策定時の試験では、菌体を接種した1時間後に肉塊の表面から1cmの部分から菌体が検出されています。熟成が進めばさらに深部へ入ります。生食用食肉の規格基準が「表面から深さ1cm以上の部分までを60℃で2分間以上」と深さを指定しているのは、そこまで届かせる必要があるからです。しかも規格基準のQ&Aは、必要な温度と時間が肉塊の部位・鮮度・重量・形状・湯温の変化・加熱方法によって変動するため、施設ごとに1cmの深さへ温度計を差した状態で条件を設定せよと求めています。短い強火の表面焼きでは、この条件を設定することも満たしたことを確かめることもできません。

ふたつめは、刃を入れた肉や漬け込んだ肉では前提が崩れることです。テンダライズ、タンブリング、結着成形は、生食用食肉の加工基準で明確に禁止されています。汚染が内部に拡大するおそれのある処理だからです。市販のサイコロステーキや味付け肉は、この処理を経ている可能性があります。

みっつめは、表面焼きは条件を測れないことです。「強火で1分」は、中心温度でも保持時間でもありません。何℃に何分保たれたかを言えない工程は、管理された工程ではありません。

では、ひき肉や成形肉は低温調理できないのか。できます。「低温調理不可」でも「75℃1分に一律固定」でもありません。

考え方は単純です。これらは表面だった部分が内部に入り込んでいるため、内部汚染を前提にします。だからこそ、中心まで条件を通します。BONIQの牛・ラム肉表はもともと中心まで加熱する前提で作られているので、成形後の最大厚みで表を引き、合計時間を満たせば条件は成立します。ハンバーグなら、成形した状態のいちばん厚い部分を測ります。

ただし、ここに注意点があります。肉種が混ざる場合は、条件の厳しい表を引きます。

BONIQのぎゅっと肉肉しい!低温調理ハンバーグは、65℃・1時間50分・厚さ3cmで作ります。この数字は牛・ラム肉表の値ではありません。牛の粗挽きに豚の細挽きを合わせた合い挽きなので、豚肉・ジビエ表の65℃・厚さ3cm=1時間50分を引いています。牛表の65℃・3cmなら1時間35分ですが、豚が入るならE型肝炎ウイルスを前提にした表に従う、という判断です。

合い挽きで牛表を引くと、条件を下回ります。逆に、牛だけのひき肉に豚表を当てるのは、時間が長くなるだけなので安全側です。迷ったら厳しい側を選んでください。

もうひとつ、選択肢を書いておきます。牛・ラム肉表が目標に置いているのはリステリアで、ひき肉で警戒したい腸管出血性大腸菌そのものを基準にした表ではありません。ひき肉や刃を入れた肉で余裕を大きく取りたい場合は、前に挙げた家庭向けの公的条件、つまり中心63℃30分以上(または70℃3分、75℃1分)を選んでください。こちらは腸管出血性大腸菌O157を想定した条件です。ハンバーグを65℃以上で作るなら、中心到達後に30分を足すだけで満たせます。

実践:ttguide牛・ラム肉表の引き方

牛肉・ラム肉表から、代表的な4つの温度を抜き出します(初期温度5℃・冷蔵庫から出したての食材が前提)。時間はいずれも、中心到達と芯温保持を合算した合計値です。

最大厚み 55℃ 57℃ 58℃ 63℃
1.0cm 4時間00分 2時間05分 1時間25分 30分
1.5cm 4時間15分 2時間20分 1時間45分 50分
2.0cm 4時間30分 2時間35分 2時間00分 1時間05分
2.5cm 4時間55分 3時間00分 2時間25分 1時間30分
3.0cm 5時間10分 3時間15分 2時間40分 1時間45分
3.5cm 5時間40分 3時間45分 3時間10分 2時間15分
4.0cm 6時間10分 4時間15分 3時間40分 2時間45分

(出典:BONIQ 低温調理 加熱時間基準表 P.2 牛肉・ラム肉表。表には0.5cmから5.5cmまで、55℃から70℃までの全条件が載っている)

牛もも肉55℃・57℃・58℃・63℃の最大厚み別合計加熱時間の比較グラフ
図4:温度が2℃違えば、必要な時間は大きく変わります。厚み2cmの55℃と57℃では約2時間の差があります。

厚みが表の右端(5.5cm)を超える場合は、表ではなく芯温計を使い、中心温度を測りながら加熱します。

逆に、形がいびつで最大厚みを一点に決めにくいときは、実測より厚い行を選んでください。表の時間は中心到達時間と芯温保持時間の合計なので、厚い行ほど長く、安全側に外れます。実測3cmの塊に4cmの行を当てても、条件を下回ることはありません。丸めて損をするのは食感であって、安全性ではありません。

なお、この表はリステリアを基準に、健康な成人が食べることを想定した条件です。高齢者、子ども、妊娠中の方、免疫が落ちている方に出すなら、温度を選ぶ段階から中心75℃1分以上に切り替えてください。

手順の要点は4つです。

  1. 交差汚染を防ぎます。牛の腸管出血性大腸菌は主に表面にいるため、生肉に触れた手・包丁・まな板がそのまま運び手になります。生肉用と加熱後用のまな板・トングを分け、調理の前後に手指を洗い、ドリップを他の食材につけません。加熱後のローストビーフを切る包丁とまな板は、生肉に使っていないものにします。
  2. 最大厚みを測ります。ものさしで、いちばん厚い部分を測ります。重さでは決まりません。
  3. 耐熱袋の空気を抜き、全体を湯に沈めます。袋が浮くと加熱ムラの原因になります。空気抜きを安定させたいときや作り置きをするときは、真空パック器(BONIQ Vacuumer)を使うと確実です。
  4. 冷却まで設計します。すぐ食べないなら、袋ごと氷水に浸けて急冷します。目安は30分以内に中心20℃付近、または60分以内に10℃付近。清潔な未開封の耐熱袋のまま5℃以下で、冷蔵3日・冷凍1ヶ月が保存の目安になります。

BONIQのレシピは、この表から時間を引いて組み立てられています。基本の低温調理ローストビーフの設定は57℃・4時間15分ですが、これは牛・ラム肉表の57℃・厚さ4cmの行そのものです。和牛ランプのユッケ風は55℃・4時間30分で厚さ2cmの行、牛もも肉のステーキは58℃・2時間40分で厚さ3cmの行です。レシピの時間は経験則ではなく、表を引いた結果です。

FAQ:牛肉の低温調理でよくある質問

Q. 中心がピンクのままですが、大丈夫ですか?

A. 色では判断しないでください、というのが答えになります。低温では色素タンパク質(ミオグロビン)が完全に変色しきらないため、基準表どおりの温度と時間を満たしていても、中心にピンク色が残ります。むしろ55〜58℃の牛肉では、それが正常な仕上がりです。判断材料は色ではなく、食材区分・最大厚み・設定温度・合計時間の4点です。逆に、色が茶色く変わっていれば安全、という判断もできません。表面だけ焼いた肉は断面の外周が茶色くなりますが、中心の条件は何も満たしていません。

Q. 55℃は「危険温度帯」ではないのですか?

A. 違います。危険温度帯は、加熱の前後に食品を長く置かないための概念で、加熱設定温度の禁止帯ではありません。BONIQが放置を避ける帯として案内しているのは10〜54℃です。リステリアが増殖できる温度は、食品安全委員会の評価書によればマイナス0.4℃から45℃までで、55℃は増殖域の外にあります。増える温度ではなく、減る温度です。むしろ注意すべきは低い側で、増殖域はマイナス0.4℃から始まっているため、家庭の冷蔵庫もその内側に入ります。加熱前の室温放置、加熱後のゆっくりした冷却、冷蔵庫での長期保存のほうが、55℃の加熱よりリスクになります。

Q. 表面を強火でしっかり焼けば、中は生でも大丈夫ですか?

A. 大丈夫ではありません。生食用食肉(牛肉)の規格基準が求めているのは「肉塊の表面から深さ1cm以上の部分までを60℃で2分間以上」で、深さが指定されています。短い強火の表面焼きでは、その深さまで条件が届いたことを確かめられません。同基準のQ&Aは、必要な温度と時間が肉塊の部位・鮮度・重量・形状・湯温によって変動するため、1cmの深さへ温度計を差した状態で施設ごとに条件を設定するよう求めています。加えて、この基準の策定時に実施された試験では、菌体を生肉に接種した1時間後に表面から1cmの部分から菌体が検出され、熟成が進むにつれてより深部へ浸潤することが確認されています。汚染は「表面だけ」に固定されていません。テンダライズやタンブリング、結着成形をした肉ではさらに内部へ運ばれるため、これらの処理は生食用食肉の加工基準で禁止されています。そして根本的な問題として、「強火で1分」は中心温度でも保持時間でもないため、条件を満たしたかどうかを検証できません。BONIQの表は、厚みの全体に条件を通す前提で作られています。

Q. ひき肉やハンバーグは低温調理できませんか?

A. できます。「低温調理不可」でも「75℃1分に一律固定」でもありません。ひき肉・成形肉・筋切り肉・タレ漬け肉は、表面だった部分が内部に入り込んでいるため内部汚染を前提にしますが、BONIQの表はもともと中心まで加熱する前提なので、成形後の最大厚みで表を引き、合計時間を満たせば条件は成立します。ただし肉種が混ざる場合は、条件の厳しい表を引いてください。BONIQの低温調理ハンバーグが65℃・1時間50分(厚さ3cm)なのは、牛と豚の合い挽きのため、牛・ラム肉表ではなく豚肉・ジビエ表の値を採用しているからです。牛表の同条件は1時間35分ですが、豚が入るならE型肝炎ウイルスを前提にした表に従います。なお、より余裕を取りたい場合は、食品安全委員会が家庭向けに案内している中心63℃30分以上(または70℃3分、75℃1分)を選んでください。こちらは腸管出血性大腸菌O157を想定した条件です。

Q. 同じ63℃なのに、なぜ牛と豚で時間が違うのですか?

A. 表ごとに対象にしている病原体が違うためです。初期温度5℃・厚さ2cm・63℃で引き比べると、合計時間は牛1時間05分、鶏1時間00分、豚1時間20分になります。芯温保持だけを見ると牛15分・鶏10分・豚30分で、豚は牛の2倍です。豚の30分が厚生労働省の「中心部の温度を63℃で30分間以上」と一致するのは、豚肉・ジビエ表が公的な食肉基準を出発点にしているからです。一方、牛の15分は公的条件の転記ではなく、リステリアのD値/Z値から算出した牛肉表としての値です。なお牛肉についても、食品安全委員会は家庭向けに中心63℃30分以上を案内しています(基準病原体は腸管出血性大腸菌O157)。牛・ラム肉表の15分はそれより短い側なので、余裕を取りたい場合は公的案内の30分を選んでください。いずれにしても、他の食材の表から値を借りることはできません。特に下限温度の流用は危険です。牛が55℃から設計されているのを見て豚を55℃で調理すれば、E型肝炎ウイルスが生き残る温度帯に入ります。

Q. 57.5℃のように0.5℃刻みで設定したいときは、表のどこを見ればいいですか?

A. BONIQの基準表は整数刻みなので、0.5℃刻みに該当する行はありません。原則は「使う行の温度を、実際の設定温度と同じか、それより低い行にする」です。表の時間は中心が設定温度に達するまでの時間とその温度での芯温保持時間の合計なので、中心が行の温度に届かないと保持時間が成立しないからです。したがって57.5℃で仕上げたいなら時間は57℃行を使い、初期温度5℃・厚さ2cmなら2時間35分です。58℃行の2時間を使いたいなら、設定温度そのものを58℃にしてください。設定を57.5℃のままにして58℃行の時間で切り上げるのは避けてください。表にない温度を自分で換算して作らないことも大事です。温度と時間の等価換算は食材と菌によって変わるため、手元で計算した値は検証できません。

Q. 高齢者や子ども、妊娠中の方に「75℃1分」を案内するのはなぜですか?

A. 同じ菌数でも、発症のしやすさと重症度が違うためです。厚生労働省は、健康な成人の場合は非常に高度(10の6乗cfu/g)に汚染された食品を食べることで発症する可能性がある一方、高齢者や免疫機能が低下している人はより少ない菌量でも発症し、髄膜炎や敗血症などの重篤な症状に陥ることもある、と説明しています。妊娠中の場合は、母体が重篤な症状になることはまれでも、胎児・新生児に感染の影響が出ることがあります。リステリア症は発生数そのものは少なく、食品安全委員会の評価書では日本の推定患者数は年間200人(平成23年)とされています。厚生労働省も、食品由来のリステリア症は年間住民100万人あたり0.1〜10人とまれである一方、重症化すると致死率が高い疾患であることから世界保健機関(WHO)も注意喚起を行っている、と説明しています。頻度は低い一方で、外れたときの結果は重くなります。この形のリスクには、家庭での誤差の余地を小さくする運用が向いています。なお、75℃1分だけが科学的に正しく63℃30分は不十分、ということではありません。両者は公的機関が示す同等加熱条件です。そのうえでBONIQの現行基準表は、脆弱な方に対しては温度×時間の等価性に頼らず、安全側へ寄せた運用として全食肉を中心75℃1分以上と案内しています。妊娠中を含め、個別に医師や公的機関から指示がある場合はそちらを優先してください。

Q. 作り置きしても大丈夫ですか?

A. 可能ですが、加熱後の急速冷却が前提になります。袋ごと氷水に浸けて一気に冷やし、清潔な未開封の耐熱袋のまま5℃以下で、冷蔵3日・冷凍1ヶ月を目安に使い切ります。牛肉の場合、この工程はとくに重要です。基準にしているリステリアは4℃以下でも増殖できるため、冷蔵庫に入れておけば止まる、という前提が成り立ちません。厚生労働省も、冷蔵保存や塩漬けでは食中毒菌が増えないと思いがちだが、このような条件でもリステリアは増殖すると注意を促しています。ゆっくり冷ますと10〜54℃の帯に長くとどまることになるので、冷却は「早く」を優先してください。開封したもの、常温に長く置いたもの、時間と温度の履歴が分からないものには、この目安を適用しません。履歴が不明な食品は、再加熱で救済せず廃棄します。

BONIQ公式ストア

結び:レアに見えても、条件は通っている

牛肉の低温調理でいちばん誤解されているのは、「低い温度で仕上げること」と「加熱が足りていないこと」が同じに見えてしまう点です。

断面がピンクのローストビーフは、火が通っていない肉ではありません。55℃・厚さ2cmなら4時間30分、そのうち3時間40分は殺菌のための時間です。事業者向けの製造基準が同じ55℃で97分と定めているのに対して、BONIQの表はその2倍以上を置いています。見た目がレアなのは、条件を外しているからではなく、条件を満たしたまま色が残る温度帯を選んでいるからです。

覚えておいてほしいのは2つだけです。いちばん厚い部分を測り、その厚みで食材区分に合った表を引きます。この2つを外さなければ、ローストビーフも、表の合計時間を満たしたステーキも、勘に頼らずに何度でも同じ仕上がりになります。

まずは、いつも焼いている牛ももの厚みを測ってみてください。そこから先は、加熱時間基準表(ttguide)が引き受けてくれます。火入れは、勘の世界を離れて、誰もが扱える科学になります。


関連記事:

牛肉の低温調理レシピ(いずれも牛肉・ラム肉表から時間を引いています):

「ユッケ風」「タルタルステーキ風」は、いずれも表どおりの温度と時間で加熱した料理です。生食用食肉ではありません。

参考資料:

【リクエスト随時募集中!】「こんなレシピ欲しい!」リクエスト投稿








【注意】
低温調理では高温による殺菌ができないため、食の安全に留意する必要があります。
レシピ記載の温度・時間設定をご参考いただき、例として大きく温度設定を変更するなどはされないようご注意ください。
なお、レシピ記載の設定をお守りいただいた上であっても、食材や調理環境などによっても安全面のリスクが異なるため、最終的には自己責任となりますことご了承ください。
取扱説明書や低温調理ガイドブック、各種の低温調理における情報などをご覧いただいた上で、安全に配慮した調理をお願いいたします。詳細はこちらの【低温調理のルール 〜6つのポイント〜】を参照くださいませ。


また食中毒に関して、下記のサイトもご一読ください。
特にお年寄りやお子様、免疫力の弱っている方は当サイト推奨温度設定に従わずに、下記厚生労働省サイトの指示に従い全てのお肉で【中心温度75℃ 1分以上】の加熱をしてください。
→ 食肉に関する注意点:厚生労働省 食中毒予防

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Kazuhiro HADA

Kazuhiro HADA

【低温調理器BONIQ ブランドオーナー】 「今日の食事が明日のカラダです!」をモットーに、低温調理で栄養バランス改善を推進してます。BONIQは健康調理器具です! 美味い食事を食べながら健康的でスタイリッシュなライフスタイルを皆さんと一緒に目指したいです。

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